北半球は今が一年で一番寒い時期だとか。こちらも、この1週間ほど、気温がマイナス15度以下になるようなものすごく寒い日が続き、風邪気味でした。なんとか体調も戻ってきたので、ブログが書けるようになりました。
今回は、前々回に書いた「スポンサーシップの土台となる考え」が好評だったようなので、その続編的な内容で、「スポンサー提案書の書き方の基本」を紹介します。
いくつかの教科書にも書いていることなので、別にもったいぶるほどのものでもありません。今、本格的にスポンサー営業をしている人から見れば、別にどうという話でもないかもしれませんが、個人的には「へ~、こんなことまで教えてくれるんだ」と思ったので、そういうことは共有すべきだと思いました。
では、ページの順を追って、説明していきます。
ちょっと唐突な感じもしますが、表紙の次に置くものは、全体の要旨です。目次ではありません。これは交渉の窓口となる人物ではなく、その上にいる社長や役員がここを読んだだけで最終意思決定できるように提案の要点をまとめます。内容、相手方のメリットなどを並べ、投資に見合うかを判断してもらいます。全部を読む時間のない、忙しい人たちが対象であること、意思決定できるように、分かりやすく、力強く押すものであるべきです。
ここからが、本来の提案のプロセスになります。まず最初に、自分たちのスポーツ組織(個人)が何を持っているのか、スポンサーシップに値する価値を持っていることを訴えます。具体的には、顧客層、観客動員、メディア露出に関するデータ、大きなイベント、イメージ調査などです。これを説明した時点で、「これはよさそうだ」と思ってもらえなければ、交渉はこの先に進めません。
(2)で説明した自分たちのスポーツ組織(個人)が持っている価値が、いかにスポンサー候補の企業に役に立つのかを説明します。例えば、ターゲットにしている顧客にリーチしやすい。企業の大規模店舗のある都市と、自分たちのチームの本拠地が同じとか。年齢層が一致しているとか。また、目指す方向性が近いというのもあります。ヒスパニック系にマーケットを拡大したい企業と、サッカークラブの提携とか。社会貢献に対する考え方が共通しているとか。それから、イメージの一致というのも大事です。子供に人気があるとか、スピーディーさを売りにしているとか。わかりやすいのでは、イメージカラーが同じというようなのも考えられます。
(3)のマッチングを目に見える形で実現するのにどうするのか、という具体化です。全体の中で、最も力を入れるべきパートということになります。大事なのは、一つ一つについて、これをやると、こういう成果が得られます、というのをはっきりさせることです。看板を一つ置くなら、(2)で説明したメディア露出データや観客動員から、このくらいの人が見てくれるでしょうというのまで、提示します。
このスポンサーシップを契約すると、企業がどんなものを得て、どうなるかを予想して書きます。顧客がこのぐらい増えるであろうとか、全体としてこういう変化が起きるのでしょうということです。お金を出してもらえるかどうかがかかっていますので、想像してワクワクするようなものでなければなりません。合成写真のようなものを使う手もあるようです。抽象論でなく、具体的なイメージを持ってもらうことが大切です。
最後のページは、価格表です。ここまでなら、いくらという選択肢をいくつか用意しておきます。相場は、前例から決めます。今はウェブ上にスポンサーシップに関するニュースがたくさん出ているので、それを参考に出来るとのこと。スポンサーシップを実行する費用(例えば、看板をつくる費用など)は企業負担ですので、ここで提示する額は、権利料のみになります。
実は、最も大事なことは提案書の外にあります。
それは、「交渉の余地」を残しておくことです。いきなりすべてをさらけ出すのではなく、交渉の中で相手の気持ちや、どうしたいのかという希望を探りながら、提案に修正を加えていって、双方が納得する形に持っていきます。この調整が、交渉そのものです。同じことを提供するのでも、「そこまでおっしゃるのならの仕方ありません」と、もったいぶって出すほうが、受け取る側の気持ちも違うでしょう。最後に、お互いがすっきりした気持ちで握手することがゴールになります。
クラスではこれに基づいて、実際に提案書をつくっていきます。展開があったら、また紹介しますね。
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スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役
13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。