アリゾナ州で行われているMLBのキャンプ、オープン戦に行ってきました。
一生のうちに一度は見てみたいと思っていたスポーツイベントの一つです。ダルビッシュ選手の動向はすごく注目されていますし、他の日本人選手の成績も多く報道されていますので、それ以外のシーンについて感じたことを書きます。このブログのテーマにも掲げているコミュニケーションが、僕としてはやはり自然と目がいきます。
5つの施設を見て回りましたが、どこでも目に付くのは、ボールや選手カードを手に、サインを求めるたくさんのファン。自作の応援ボードや、昔の選手名鑑、ワールドシリーズに出たときの試合パンフレットなど、ひとひねりしたグッズはやはり選手も気になるようです。中には、詳細なリストやファイルを持っていたり、グループで動いたりして、明らかに業者の人だろうというのもいますが、排除できる理由はありませんしね。
それに、ただ「サイン下さい!」「はい、これ」というような言葉を交わしているのではないんです。もっと、突っ込んだやりとりをしているのが耳に入ってきます。
「どこから来たの?」 「ウィスコンシンから。ドライブで」とか
「去年、この帽子にもらったサイン、ずっと大事にしてここまで持ってきたんで」 「じゃあ隣に書くね。来年も来てね」とか
「外野で守っていて、暑くないの?」 「ほとんど バーベキューだぜ」とか
雑談と言うか、普通の会話をしている感じです。従って、サインをする時間も5分とかではなく、15分、20分くらいずっと続けていたり、「欲しい人、もういない?」と自ら聞いたりする選手もいます。試合直前でも結構ぎりぎりまでサインする選手もいますし、急いでいても「後は、試合が終わったらするね」とか、「明日は出番がないから、ゆっくりサインできるよ」とか、「ごめんね」というのでなく、丁寧に自分の口で伝えています。日本で言う「係員」は周囲に一人もいませんし、警備も1人、2人くらいで少なく、うるさく注意するのではなくて、サングラス越しにじっと見て、目でプレッシャーをかけ、必要最小限の事だけ口にするという感じです。
日本のスポーツ界を長く見てきた自分からすると、選手に対して、ファンがお願いする立場というのが当たり前のように思っていましたが、ここでのやりとりを見ていると、イーブンな関係です。マイナーの選手でも、チームの看板選手でもファンとの距離感は同じような感じです。根本にはアメリカ文化の方が、人間関係がカジュアルだというのはあるとは思いますが、それにしてもずいぶん気さくに対応しています。
選手の足の運びを見ていると、移動中に声を掛けられたからサインする、というよりも、練習が一段落したところで「さあ、ファンとの触れ合いの時間だ」という雰囲気で、自ら人だかりに近づいていきます。そして、ゆっくりと会話も楽しんでいます。じっと見ているうちに、なにか、ファンの期待感や様々な思いに直接触れることで、それを溜め込んで自らの力にしているような気がしてきました。
試合で力を発揮するのに、試合前から選手は敢えて壁をつくって、集中力を高めて、爆発させるというイメージを持っていました。まだキャンプの段階だからそうなのかもしれませんが、ここでは全然違うやり方を見せられている気がします。
(レンジャーズの主砲、ハミルトン選手。ちなみこれは、試合開始10分前くらいのシーンです)
日本人メジャー選手はどうしてるのって?
僕が見たのはわずか数日ではありますが、手を上げるだけとか、無言で通り過ぎることが多かったように思います。ファンからいらぬ誤解を受けているのではないかと心配になります。「お前はサインをもらえたか?」と聞いてきた周囲にいた人たちの話だと、日本選手からサインをもらえる機会は多いとは言えないようでした。ひと言、言葉を交わせばファンの印象はだいぶ変わってくるんじゃないでしょうか。
直接コミュニケーションをして触れたファンからの期待感を力にかえる。日本選手だって、できるはずです。
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Sports PR Japan 株式会社 代表取締役
13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。