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子どもの水泳大会に

12.5.29

スポーツマネジメントを勉強していると、日本人の知り合いに言うと、「メジャーリーガーの代理人になりたいの?」とか、「プロチームの経営をしたいの?」とか、すごく儲かりそうなイメージをもっている方がいるように感じます。スポンサー料とか、競技場のネーミングライツとか、W杯の放映権料のような億単位を超えるようなビジネスのことなどが、マスコミで報じられるスポーツマネジメントの話題では多いせいでしょうかね。

しかし、単に「マネジメント」や「経営」と言った場合、世界的な大企業も対象になれば、近所の八百屋も対象になります。同じようにスポーツマネジメントにも、すごく小さい規模のものも存在しています。先日、僕が住んでいるブルーミントンで行われた少年・少女向けの(幼稚園から大学生まで幅広いですが)競泳大会は、まさに小規模のスポーツマネジメントです。

まず会場に行くと、これが目に入りました。

  入場料がかかります!

1日$4から$6ドルという額です。観客は、見たところほぼ100パーセント出場選手の家族と言っていいですが、百数十人は来ていました。平均よりはるかに多くのスポーツ観戦の経験のある僕ですが、日本人的な感覚からすると少々驚きですよね。

そういえば、以前に大学のフットボールに日本人の友人を連れて行った時に、「5ドルもかかるんですか」と言われたことを思い出しました。ここでは、地元の高校のバスケットでも5ドルの入場料がかかります。こうして、ひとりひとりから小額ながらも集まったお金はチームの運営費に回され、ユニフォームや用具代、遠征費などになっていくわけです。

プロスポーツの歴史をクラスで勉強した時に教科書で読みましたが、アメリカでは、「選手のプレーを見るために、ある程度の人数が集まるのなら、お金を取ろうじゃないか」という感じで自然発生的に、ビジネスが始まっています。今では大きなビジネスになっている野球やフットボールやバスケットもそうだったのです。そういう感覚が生きているのでしょう。払う側も当然という感じです。

国全体のスポーツビジネスの規模を金額で表すのは計算が大変で、正確に表すのは難しいですが、アメリカと日本は人口の差は2倍だが、スポーツビジネスの規模の差は、それ以上だと言われています。留学する前は、それは、最初に書いたようなMLB、NBA、NFLなど人気スポーツが引っ張って、できている差だろうと推測していました。しかし、この水泳大会のような小さなレベルでも、スポーツできちんとお金を回していくというところにも差があって、その積み重ねの差も結構あるんじゃないかなと感じます。たとえば、今は競泳のシーズンですので、毎週、全米各地で100近い各クラブ主催の大会が行われています。(ちなみに、これらの記録はmeet mobileというappleのアプリで簡単に見ることができます)

留学生など日米の両方のスポーツビジネスを知る人たちと話をすると、よく出てくる話が「日本のスポーツビジネスにおけるB to Cマーケットは小さすぎる」という指摘です。日本は広告代理店が主導して長くスポンサービジネスを中心に発展してきましたから、商習慣としてなかなか変わらない。それとともに、僕は、顧客一人ひとりの意識の差も大きいのではないかと思っています。「えっ、これ、お金取るの?」という感覚。また、日本では、同じ施設を使うのに、観客からお金を取る場合と、とらない場合で会場使用料が異なる施設もあります。電気代などはかかるコストは変わらなくてもです。僕は、これらはアマチュアでスポーツが発展してきた歴史が長いからだと思っています。

アメリカでは、そんなに抵抗感がないようです。寄付という感覚とも違います。自分にとっては、見るだけの価値がある。だから、払う。こういうのが積もり積もって、トップレベルのプロスポーツのチケット代の差にもつながっていくと思うのです。日本のプロ野球でオールスター等を除くと、1万円以上の席はまずないですが、アメリカでは、バックネット裏で100ドルは驚きではないですし、一番人気の高いヤンキースタジアムなら100ドル以上の席がかなりを占めています。

別の観点では、日本はアメリカに比べて、さまざまな娯楽が、きめ細やかでレベルが高いということもあります。たとえば、無料で見られる面白いテレビ番組は、娯楽という点ではスポーツ観戦のライバルです。ゲームが世界で一番発達しているのは日本ですし、マンガ、アニメも世界のトップと認められています。ユニークなテーマパークなどもあります。同じ2000円で、どう楽しめるのかと考えたら、日本のスポーツは相当頑張らないといけません。

新たなプロスポーツを興し、日本のスポーツ業界を改革している人たちの努力というのは、大変なものだと、アメリカの事情を把握した今、本当に思うのです。このような個人の意識を変えるというのは、途方もない時間がかかるのではないでしょうか。

では、聞きます。あなたは、子どもの水泳大会に400円払いますか?

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この記事の執筆者

早川 忠宏

早川 忠宏 | Tadahiro HAYAKAWA

スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役

13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。

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