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カーリングを使ってPRする

13.2.21

先週、カーリングの日本選手権をテレビで見ました。

優勝したのは中部電力でしたが、個人的には準優勝した北海道銀行のチームが気になりました。トリノ五輪前に取材させてもらったことがあるメンバーがいるということもありますが、それとは別にこのご時勢に新規でカーリングのスポンサーを始めたのはユニークだと思ったからです。同銀行はチームを持つことに加えて、今回の会場となった通年制カーリング場のネーミングライツも取得しています。これらをスポンサーシップとして、どう活用できるのかなと考えてみました。

一般的にスポーツのスポンサーシップと地域貢献やイメージアップということで片付けられてしまいますが、最近は経営環境の変化が激しかったり、株主の声が厳しかったりしてスポンサーも費用対効果というものが厳しく問われるようになりつつあります。この分野で先進しているアメリカでは、この傾向が顕著であることがわかっています。例えば、アメリカで発行されている昨年のスポーツビジネスジャーナルのアンケート結果では、スポーツ施設に看板を掲げるというのはたいした効果がないと多くの人に思われていることがわかっています。本業に役に立つことがはっきりしないスポンサーは続けられないでしょう。

今回の北海道銀行のケースでは、同銀行は地域振興・社会貢献の観点、北海道カーリング協会の初代会長を元頭取が務めていたことをその支援の理由として発表しています。2010年11月のチーム発足時のプレスリリースによります。ここでは、もう一歩深く、このスポンサー権を本業に使えないか、ということを考えてみたいと思います。

本業に役立てると考える時に、まず、この銀行の真の顧客は誰なのかという点にさかのぼらなければなりません。銀行の顧客は預金してくれる人ではありません。お金を借りてくれる人です。知り合いに銀行に勤めている人がいるので、北海道銀行の主な顧客はどんな人になりそうなのかと聞いてみました。すると、(1)自分でビジネスをしている人。設備投資、業務の運転資金などを借ります。扱う金額は大きいが、事業の失敗等のリスクも大きいです。(2)住宅ローンを組んでくれる人。主に会社員など、個人の顧客。金額は大きくないが長い期間関わること、返済されないリスクが低いことが特徴です。この2つに大別されるそうです。どちらの方が多いのかまではわかりません。

(1)の顧客は、金額や返済していく事情がそれぞれの案件で随分違っているように思います。しかし、(2)の顧客なら、おおまかな傾向がわかります。ネットで検索しても、住宅ローンを利用する人の平均という資料が簡単に見つかります。あるサイトでは、44%が30代、家族は平均3人、世帯年収400万円~599万円の人が40%を占めていることなどがすぐにわかります。リソースの有効活用のため、ターゲットを絞りやすい、この(2)の顧客を拡大することをスポンサーの目的の一つにすることができるのではないでしょうか。

家族の人数が平均3人ということは、夫婦ではなく、親子が対象です。親子カーリング教室というのが、一つ使える方法ということが思い浮かびます。それなら、地域貢献の一環として、やっていそうですね。しかし、厳密に、この顧客に効くPRというのであれば、子供たちだけを集めたカーリング教室ではダメです。住宅ローンを借りる意思決定権のある親との関係強化がPRの課題解決であるからです。

また、カーリング教室の全部をカーリング協会に丸投げするような形では、効果がありません。例えば、運営のスタッフを住宅ローンを担当する行員が行い、顧客となる家族の姿を知る場、コミュニケーションを交わす場にしていくことなどが有効と考えられます。いきなり売り込んでは、逆効果になると思いますが、そろそろ家を建てようかという時に、相談される、顔が思い浮かぶ存在に近づくことを目的とします。となると、単発ではなく、週1回で何ヶ月かに渡って続ける方が、効果は高そうです。親子を巻き込んだコミュニケーションという点では、この北海道銀行には子供を持つ選手がいることが、強みになりそうです。

支給するウェアに銀行名やマークを入れておけば、洗濯するたびに親御さんの目に入ることにもなります。ここまで説明できれば、スポンサーシップはもはや地域貢献やイメージアップといったふわふわしたものではありません。運営のコストがいくらで、この教室のメンバーの中から何件、いくらのローン契約に結びついたという効果測定もできます。社内で継続すべきか、止めるべきかという議論を行うにも数字で判断できます。

留学中に、こうしたケーススタディを何本かこなしていたのですが、楽しくて、成績も良かったので、久々にやってみました。妄想が暴走しているじゃないかと、ちょっと不安ですが、考える訓練の一つです。小山薫堂さんによると、こういう頼まれてもいないのによりよい方法を考えることを「勝手にてこ入れ」と言うそうです。

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この記事の執筆者

早川 忠宏

早川 忠宏 | Tadahiro HAYAKAWA

スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役

13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。

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