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異質なグループを取りに行く

13.11.30

スポーツのチームを経営するには、ファンを獲得し、コアなファンに育てなければなりません。チケット代、グッズ代などの収入、また、ボランティアなどで人力をもたらしてくれるからです。

その過程の中で最も困難なのは、新規のファンの獲得です。

何も知らなかった人に知ってもらう。知った人にさらに関心を深めてもらう。さらに、観戦やグッズ購入などのアクションを取ってもらう。ここまで来て初めて、チームの実入りとなります。これは、一度ファンになった人を、さらにコアなファンにするよりもはるかに難しいことが想像できると思います。

一般的には、広告で呼びかけるとか、学校や地域を単位に招待するとか、今のファンに友人を誘ってもらうとか、と言った手法が取られます。

 

この点に関して、新しい手法が最近、流行の兆しを見せています。それが「異質なグループを取りにいく」ということです。

ビジネス界では、このごろ、このようなキャンペーンが見られるようになりました。例えば、ひげそりのシックがエヴァンゲリオンを使ったキャンペーンを行いました。ひげそりと人気アニメはあまり関係なさそうですが、 ひげが印象的なキャラクターを巧みに使うことで、ネット上で大きな注目を集めました。成熟した市場で、ブランドのスイッチィングは難しいと見られていましたが、目立つ店頭キャンペーンなども相俟って見事に成功を収めました。

アニメには全然詳しくないので、中身については突っ込みません。コミュニケーションの方法として見ますと、これは「同じ関心でつながっている大きなグループの力」にリーチすることで、そのグループ内において存在感を増し、そこから何人かのファンを生み出すことです。今日、ソーシャルメディアの拡散力は強力ですから、広がりやすく話題になりそうな映像や前振りを使って、期待感を高めます。そして、いよいよ当日にその期待を超えるようなことをバーンと行います。その模様も少なからぬファンがブログやSNSに書き込みますから、あっという間に広がっていきます。

この方法を取ることで一番大きいメリットは、普段はその商品、スポーツやチームに関心のない人たちに強く届くということです。

ポイントは、コアなファンの人も経験していないことを提供すると満足度が上がるということ。その裏返しで、一番のリスクは、熱心なファンたちに反感を買うことをしてしまった場合、批判もあっという間に広まるということです。諸刃の剣とも言える、企画です。

 

スポーツ界の例では今季、ソフトバンクホークスが超新星という韓国の男性グループを呼ぶという企画を行いました。始球式に参加してもらったり、試合中もボックス席で見ているスターたちをイニング間にチラ見せしたり、その日限定のタオルマフラーを配ったりしました。検索すると、いろいろ出てきます。もちろん、ホークスや野球文脈ではありません。超新星の熱烈なファンのブログなどが、検索リストの上の方に来ます。

この例ほど、大きなものでなくても、ゆるキャラを呼ぶというのなら、予算の少ないイベントでも行うことができます。無料で出演してくれるゆるキャラは結構あるんです。ことし6月のブラインドサッカーの日本選手権では、複数のゆるキャラを呼んで、ブラインドサッカーのボールを蹴ってもらうというパフォーマンスを行いました。個人的には、ゆるキャラの追っ掛けという人たちがいることに、驚きましたが。

日本のスポーツ業界は成熟市場であり、プロ野球、サッカー、相撲など代表的なプロスポーツでも全体では確実に観客動員数が減っています。新しいものが市場を拡大したり、今あるものが地位を確保し続けることは極めて難しいと言わざるを得ません。様々な興味で集まるグループが多数存在するという現状で、この「異質なグループを取りにいく」という戦術は、苦しい中に光を見出す一手だと思います。

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この記事の執筆者

早川 忠宏

早川 忠宏 | Tadahiro HAYAKAWA

スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役

13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。

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