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タマスタの楽しみ方

17.4.8

川﨑宗則選手がアメリカからソフトバンクに復帰し、その復帰戦の舞台となったのが、ファームが使用する球場、タマホームスタジアム筑後(通称:タマスタ)です。その復帰のニュースより、数週間前になるのですが、仕事で近くに行った時に体験してきました。コンパクトで快適なスタジアムで楽しめましたので、ここでは、スポーツマネジメント的視点から、タマスタの楽しみ方を書きたいと思います。

福岡県の南の方、久留米よりまだ先にあるJR筑後船小屋駅が最寄りです。九州新幹線の駅もあり、駅前はきれいに整備されていて、広い公園の中になります。博多からは新幹線で25分、在来線の快速で小一時間とかなり遠い印象です。裏を返すと、広い福岡県の中で、ヤフオクドームから離れた、「新たな顧客とのタッチポイント」をつくったと見ることもできます。

立派な球場はすぐに目に飛び込んできますが、そこまでの数分の道のりの途中にコンビニはありません。500円のお弁当を売っているところはありました。周りはほとんど畑です。

 

◆イベント広場は侮れない

ファームの試合とは言え、球場の周辺にはイベント広場がつくられていました。地域の名産品を売ったり、スタジアムグルメもいろいろ選べます。スポーツイベントで集客し、それには相手チームのファンも遠くから来るので、地元の名産品のアピールというのはかなり有効です。ドーム型のエア遊具は、子供たちに大人気でした。野球以外の部分の充実も、集客には、意外と侮れないんですよ。そんなに混んでいませんし、椅子も多くあって、座って食事をしたり、試合前や試合観戦に疲れた時に、ゆったりとすごすことができます。から揚げ、大きくて、食べごたえがありました。

◆スタジアムはコンパクトで距離が近い

両翼や中堅からの距離は福岡ドームと同じだそうですが、ファウルゾーンが狭い印象です。ベンチの声もよく聞こえますし、打球音やボールがキャッチャーミットに収まる音も、バックネット裏だとはっきり聞こえて、プロ野球の迫力が伝わってきます。一軍用の大きなスタジアムではなかなか味わえない体験です。物理的な距離の近さが、心理的な距離の近さにもつながっている感じがしました。

 

◆専用キャラクター「ひな丸」は絶妙

ひよこをモチーフにした「ひな丸」というキャラクターを、一軍用とは別にわざわざつくっています。着ぐるみもありますし、この球場ならではのキャラクターグッズにもつけられています。この設定は絶妙です。一軍のキャラクターはチーム名の鷹が由来の「ホークファミリー」ですから、ファームがひよこというのは、そこにつながるスト―リーです。また、ファームというのは若手選手が育っていく場であり、それを明確に想起させるキャラクターでもあります。特に子供や女性に向けたコミュニケーションツールとして効果がありますし、キャラクターグッズの種類も増やせるので、収入増につながる可能性もあります。

◆ミニチュアだが、すべてを体験できる

実に多彩にファンサービスプログラム(リンクはこちら)が用意されていて、参加希望者は試合前のそれぞれ決められた時間に並んで抽選に参加します。選手とハイタッチ、ボールボーイ、アナウンスなどなど、選手を間近で見たり、触れ合える機会があります。交流した選手が一軍に行って活躍したら嬉しいでしょうし、長い目でみたファンづくりにつながっています。

それから、小さいながらも球場にはグッズ売り場や飲食ブース(選手寮のカレーなどを販売)がありますし、試合前やイニング間を盛り上げるアナウンサーがいて、スクリーンを使って宣伝をしたりもします。応援歌を歌ったり、7回や勝利の後のジェット風船も一軍同様に行われます。それでいて、チケット代は一軍に比べてぐんと安いので、お得な印象がありますし、廉価版のここを体験した後に、いずれはヤフオクドームに行こうという気持ちになる人が出てくるのも、自然な流れだと思います。

もう一つ、球場を運営するスタッフやボランティアにとっても、ここは育成の場になるのではないでしょうか。いきなり、あの巨大なヤフオクドームで何万にもを迎えるのは荷が重いでしょうが、小さな現場で経験を積んで自信を得て、大きな舞台に進むこともできます。

この充実ぶりを見れば、設備投資費(スクリーンや座席も立派です)、人件費、イベント運営費とどれもお金がかかっているな、と容易に想像できます。 一方で、球場の広告看板はきちっと入っていますし、ネーミングライツも取っていますし、来場者から得られる収入もかなり計算できます。昨年2月にソフトバンクのキャンプ(宮崎県)も見に行ったのですが、投資をしてリターンを増やす、という姿勢が貫かれていて、「これぞ、スポーツビジネス」と感じます。

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この記事の執筆者

早川 忠宏

早川 忠宏 | Tadahiro HAYAKAWA

スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役

13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。

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