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スポーツ界が社会貢献活動をすべき8つの理由

11.8.3

きょうのクラスで学んだ内容プラス自分の考察を忘れないうちに書いておこうと思います。

お題は「スポーツ選手や組織が社会貢献活動をすべき理由」です。

スポーツと社会貢献、という言葉を日本でも随分と聞くようになりました。僕自身も、記者としての経験を通じて非常に気になってきたテーマでした。しかし、今しがた検索したところでも、日本でのその理由の説明は、心情に訴えるようなぼんやりした形(「スポーツ文化の振興」など)か、個別の具体例の紹介が多く、正直言って応用しにくいです。

このアメリカの教科書「Sport Public Relations: Managing Organizational Communication」   にある説明は、アメリカと日本で多少状況が違うところもありますが、非常に端的に説明してあったので、ここで共有しておきたいと思います。

 

(1)社会的責任を示すため

社会貢献活動は、スポーツ選手や組織が、ただ単に、自分たちの仕事、ビジネスをやっているというのではなく、コミュニティーと結びついていることをはっきりと示すことになります。そういう気持ちがあっても、何もやっていないのとは違うということです。人によっては、利益よりも社会的責任を果たすほうが優先度が高いと考えています。社会的責任を果たしていると思われている組織に対して顧客はよい印象を持つ、ということは、当たり前に聞こえるかもしれませんが、きちんと証明している論文もあります。

 

(2)イメージを高めるため

スポーツ組織を対象にしたものに限りませんが、顧客は、社会貢献活動を行っている団体、企業によいイメージを抱くということを証明した研究が複数あります。そして、イメージを高めるためには、こうした活動を行っていることをきちんと広報しなければなりません。自分たちにとって都合のよい情報を流していると思われるかもしれませんが、たまに、販売促進や観客動員ではない社会貢献活動に関した広告を打つのは、このためです。

 

(3)コミュニティーの価値を高めるため

スポーツ組織が携わっているコミュニティーの価値が高まることは、直接的な利益になります。経済力を増したり、犯罪率が下がったりすれば、そのコミュニティー内でそのスポーツ組織ともっと関わろうとする人が増えるでしょう。つまり、新しい顧客がその中から出てくるわけです。コミュニティーはたとえばホームタウンと考えるような特定の地域とも考えられるし、あるチャリティープログラムを行っている協力団体にも当てはまります。スポーツの知名度の高さやブランド力などを生かして、あるプログラムへの協力者が増えたり、寄付の額が増えたりするとすると、もっと協力関係を続けようということになりえます。逆に、そうしたプログラムとの協力関係を通じて、スポーツ組織を知る人が出てくる可能性もあります。

 

(4)さまざまなグループと結びつくため

社会貢献活動という形なら、ターゲット顧客でない人々とも関係を築くことができます。チケットを買ってくれそうな層となれば、収入や地域などで絞るでしょうし、スポンサー企業として狙うにもイメージなどを気にします。マーケティングやPRをしていく上では、限られたリソースで最大の効果を生み出す必要があるので、常にそうした狙いで対象が限定的になってしまいます。しかし、社会貢献活動なら、もっと幅広い年齢層やバックグラウンドを持つ人と接点を持てます。この中から、顧客になる人が出てくる可能性があります。テキストでは、YMCAは金銭的な余裕のない人を対象に補助金を出す社会貢献を行っているので、民間のスポーツクラブより幅広い顧客を持っていると指摘しています。YMCAから補助金をもらっているうちに、十分な収入を得られるようになったとしても、他のクラブには移らずに、きちんと会費を払って継続してくれる人が出るということです。

 

(5)その競技への関心を高めるため

スポーツやスポーツ組織に興味がなくて、接点がなかった人に対して、社会貢献活動という形で接した後、興味を持つようになってくれる可能性は十分あります。社会貢献活動には、スポーツ組織が持っているリソースを生かすはずなので、たとえば選手の人柄に触れたりします。よくあるのは、スポーツを教えに行くという社会貢献活動です。技術だけでなく、健康増進やコミュニケーションを高めるというようなテーマも含めます。その機会で初めてそのスポーツに触れた子供が、面白さにひかれて、試合を見に行きたいということになるかもしれません。また、NBAでは、選手が子供に本を読み聞かせるという活動を展開していますが、これはスポーツにまったく関心のなかった子供が、スポーツ選手の人柄に触れる機会にもなっています。元々、ファンだった子も別の一面を知ることで、もっと好きになるかもしれません。中にはただ見るというのではなく、将来、そのチームに入る選手になる子もいるかもしれません。

 

(6)税制優遇を得るため

これは日本とアメリカで状況が違いますので、短く説明します。アメリカでは、社会貢献活動に対する寄付は税金の減免につながります。寄付した額に対してだけでなく、収入全体から税金が控除されます。高収入のスポーツ選手個人でも、節税になるわけです。また、NPOとして認定されれば、その団体は税制優遇措置が受けられます。つまり、収入が同じとしても、税金として黙って引かれるのではなく、控除された分、自分たちで考えて使える金額が増えるということです。

 

(7)収入を増やすため

これは間接と直接の2通りが考えられます。間接的には、(1)から(5)で書いたことです。社会貢献活動は、顧客を増やしたり、顧客からの関心や信頼度が増したりすることにつながって、収入へと変わります。直接は(6)のほかにも考えられます。たとえば、スポーツ用品メーカーが商品を寄付したとします。実際の金銭的な負担は製造原価と輸送費ですが、寄付の換算としては、標準小売価格でするでしょう。この差額分だけ、メーカーは得しています。あるスポーツチームが試合のチケットを寄付したとして、その招待客が売店でお金を使ってくれたら、それは収入になります。満員になる試合なら、チケット代の分の収入があったはずなので、別ですが。

 

(8)他の人のために頑張るという気持ちになるため

これはテキストには書いていません。僕のオリジナルです。社会貢献活動は、自分たちのファンが何を思って、どのように自分たちを見てくれているのかを直接知る機会になります。(4)にあるように、ターゲット顧客と目さないグループとも、チャリティーという形なら、接点を持つこともできます。たとえば、病気の子供に対する寄付や支援などが想像できます。目に見えない効果かも知れませんが、試合中の何かの折に、直接交流した人からの一言や表情を思い出せば、踏ん張りが利くのではないでしょうか。(こう言って、いくつかの具体例が思い浮かんでくれると嬉しいです。)

 

上記のことは、すべてスポーツ組織や選手の安定につながるものと考えられます。結びつく糸を増やすことと太くすること、自尊心を高めること、そして、金銭も得ること。収入や金銭的なメリットがある、というのをおおっぴらに言ってしまうのが、日本的価値観からすると、ちょっと驚くかもしれませんが、お金が尽きたらスポーツも存続できませんから、別に悪いことではありません。

実際に行う時には、時間や労力、予算などのリソースが限られており、なんでもかんでもやるわけにはいきません。そのあたりをどう判断すべきかを、次回に紹介したいと思います。

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