今回の危機が発生し、皆さんも不安を解消するために情報収集に努める日々を過ごしてきたかと思います。第2回は、その点について、変わるのではないかと思うことを書きます。
スポーツの話ではないのですが、私自身は今回のコロナ禍においてまずFacebookで先に体験した人の話を見て、参考にすることが多かったです。例えば、「感染するとこういうことが大変なんだな」と知ったり、海外在住者からの情報で「ロックダウンは、こうなる」などと知りました。知人のお医者さんの投稿です、というのがシェアされたりするのも助かりました。それらは別に有名人と言うわけではなく、一個人の体験談や見解ですが、それを信頼し、心の準備として大きな助けになっていました。そして、同じような内容を、テレビなどのマスメディアで知るのは、FB経由よりも何日か後ということが、何度もありました。
スポーツに関してだと、エンタメ的な情報収集ですが、選手のツイートやYouTube、チームの企画動画、海外のテニス大会が発信する動画などを見て楽しんでいます。テレビを見る時間が減り、YouTubeを見る時間が増えた気がします。選手同士が対談したり、スポーツ以外の特技を披露するものなども面白かったです。「SNSの方が、マスメディアより内容のバリエーションが豊富だな」と気づいてしまったのは、私だけではないはずです。「SNSは少ない人数で意思決定し、身軽にいろいろ試せるんだな」という認識を新たにしました。中には、プロの撮影や編集が入ったものもありますが、そうじゃなくても人柄を感じられるよさがありました。
ネットのスポーツニュースは毎日追っていますが、数も少ないです。スポーツメディアにおいて、今回のコロナ禍がこれまでの危機と違ったのは、取材できる場所や機会が制限されたこと、そして試合や練習が行われないので、行く場所もなく、雑談もなく、取材するテーマが見つかりにくくなったことでした。元スポーツ記者の私には、これまでの型通りのことができなくなって、苦しんでいる様子が非常にわかります。SNS投稿の転載が記事になっているのも多く目にします。
そこで、今後流れがどう変わるのか、というと、
個の発信力がさらに力を増す。場合によっては、ビジネスにつながっていく
ということです。
今回のコロナの問題が起きる前から、SNSで何万人、何十万人というフォロワー数を持つ有名人が出現していたという流れがありました。誰も知らなかった人がコンテンツの面白さで有名人になる例も知られています。少ない人数、仲間内のコミュニケーションでもSNSが使えることも知っています。
スポーツビジネスの観点では、ファンとしっかり繋がっていた選手は、この状況下でも力を発揮しています。様々な企画にトライし、その反応が大きかったり、モノが売れたりしています。逆に、競技(競技団体)や代表チームのような、ファンとのつながりが薄いものは苦戦している印象です。常日頃からコンタクトを取り続けるというよりは、試合に多くの観客が集まってくれればいい、という短期的なプロモーションに頼っていたのかもしれません。
例えば、少数の顧客を抱えるパーソナルトレーナーのような人でも、自分を選んでくれてる人とのエンゲージを高めていれば、今回のような危機においてお金を払ってくれるはずです。クラウドファンディングやオンラインショッピングで、友人が支援を呼びかけたお店にお金を払った人もいたかと思います。日頃からコミュニケーションを重ね、顔の見える人から買うというのが、昔は商店街でしたが、らせん状に進化して、オンライン上にそれが移った感じです。マスメディアを通して、トップダウン的にバサッと伝わるのではなく、個のつながりの大切さ、面のつながりを体験した人が増えたのではないでしょうか。
そう考えると、個人が発信力、表現力に磨きをかけていくことが、非常に大事になります。もうお気づきの方もいて、SNSで日々取り組んでいる人もいるでしょう。マスメディアと違ってプロの編集を受けることがないので、自分の技術が問われます。リスク管理も含めて、自分でやっていくしかありません。
広報PRという私の仕事の範疇で言うと、これからはマスメディアに対してプレスリースを渡せばいいのではなく、この人なら共感してくれるであろうという個人に一次情報を手渡しすべきではないか、と考え始めています。フォロワー数が多い人を選ぶのではなく、コンテンツを見て共感できる人に渡す。その人の発信力で、類友に伝わっていく。「あいつがお勧めするなら」という信頼感で伝わる。
個の発信力がさらに力を増す。
個のインパクトを知った人たちが増えた今。この流れは加速していくでしょう。
ただ注意しなければならないのは、これが起きているのはオンライン上だけということです。世の中には、ネットやSNSを活用していない人もかなりいます。私の両親のようなマスメディアだけに頼っている人と、ソーシャルメディアを使いこなしている人との間に大きな情報ギャップがあるということも、今回感じたことの一つです。そんな「分断」があることは意識しておく必要があります。
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スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役
13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。