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育成システムはなぜあるのか?

22.3.26

プロ野球の二軍やJリーグの下部組織など、日本のプロスポーツにも育成システムがあります。一方で、BリーグやTリーグなど育成システムがないものもあります。これはアメリカでも同様で、野球にはメジャーリーグとマイナーリーグがありますが、プロフットボール、NFLにはありません。

では、育成システムはなぜあるのでしょうか?
「強化において大事だろう」というような浅い話ではありません。
私がアメリカの大学院で受けた「アメリカスポーツ史」のクラスで教わった、プロ野球の例を説明します。

1920~30年代、アメリカでは、野球がようやくビジネス化されてきました。
しかし、様々なリーグやチームができては潰れ、選手の引き抜きがあったり、給料が安いと出ていく選手がいたりと混沌としていました。
いかに球団経営を安定化させるかに腐心し、様々な仕組みや制度がつくられていきます。

当時のプロ野球チームは、コスト削減に取り組んでいました。
今のように、選手の保有権やドラフト制度などが整っておらず、何でも交渉だったそうです。
選手の給料を減らす。チームの総人数を減らす。年俸が上がる選手は、大きな都市にある、つまり資金的に余裕のあるチームに売却するなどです。

そこで、費用を抑えながら、選手を育てる仕組みがあれば良いのではないかと考えた球団経営者がいました。それが、ブランチ・リッキーという人物です。元々はプロ野球選手や監督を務め、1930年代初めにはセントルイス・カージナルスのゼネラルマネージャーを務めていました。

人気のない他のリーグ、他のチームをカージナルスの選手の育成期間としたのです。ビジネス的に言うと、垂直統合ということです。これではマイナーなチームやリーグが破壊されてしまうということで、当時のコミッショナーにも反対されたそうです。

しかし、ブランチ・リッキーは、ものづくりのシステムを当てはめれば、いけるのではないかと考えました。
素材となる選手を安く獲得する。選手を指導して強化する仕組みを作る。マイナーチームの試合で実戦経験を積みながら質を高める。ある程度の質になったら、上のチームに引き上げる、もしくは他のチームに売却する。

そして、カージナルスは優秀な選手を育成組織から次々と輩出して、強豪チームとなったことで、他の球団も追従することになりました。
スポーツでは、結果が出ると見方が変わるものですね。

経営としても、営業利益率が上がっていたとの資料が残っているそうです。

育成組織がなぜあるのか?
それは、チームを経営する上で、費用を抑えながら、強化できる。
つまり、合理的であると言うわけです。

ちなみに、ブランチ・リッキーという人物は、その後、ブルックリン・ドジャースに招かれました。
そこで、黒人選手を受け入れるマイナーリーグ組織を創設し、さらに、ジャッキー・ロビンソンと契約し1947年4月15日に史上初の黒人選手としてメジャーデビューさせました。
ジャッキー・ロビンソンの物語は、映画にもなっています。

革新的な球団経営者であったことで、よく知られています。

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この記事の執筆者

早川 忠宏

早川 忠宏 | Tadahiro HAYAKAWA

スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役

13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。

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