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アメリカで3つの女子スポーツがプロ化。その”勝ちパターン”とは?

25.8.17

先日、あるニュースサイトで「アメリカでチアリーディングのプロリーグが来年誕生する」という報道を目にしました。「それも、プロになるの!」と驚いて、他にもアメリカでプロ化の動きがないか調べてみたところ、2025年にすでに3つの女子スポーツでプロリーグが誕生していたことがわかりました。女子ラグビー、女子ラクロス、女子ソフトボールです。
背景には、コロナ禍からのスポーツ市場の回復と、2028年ロサンゼルス五輪に向けた強化や機運の高まりがあるようです。地元開催の五輪を起爆剤として、新リーグを創出し、その先の競技の発展につなげようという試みです。2020年大会を前にした日本では見られなかった動きと言えます。近年アメリカでは、女子スポーツ市場への投資が拡大しており、この流れを後押ししています。
以下、それぞれのリーグを簡単に紹介します。

3つの新リーグ

女子ラグビー:ウィメンズ・エリート・ラグビー(WER)

今年3月に開幕。従来のセミプロリーグでは、試合ごとに報酬が支払われる形でしたが、移動や宿泊費用の支援がなく、持続可能性に限界がありました。新リーグでは、こうした費用がリーグから支援されるようになり、選手たちが主体的に動いたことによって実現した側面も大きいです。6チームによるリーグ戦。スポーツ配信サービスDAZNで世界中に配信されています。

女子ラクロス:ウィメンズ・ラクロス・リーグ(WLL)

今年2月に初シーズンがスタート。4チームでの構成です。男子プロリーグ「プレミア・ラクロス・リーグ(PLL)」が女子部門を新設する形で誕生しました。注目すべきは、2028年ロサンゼルス五輪で採用される6人制で行われている点です。この動きに呼応する形で、7月にはスポーツ専門放送局ESPNが、男子リーグも含めた5年間の放映権契約を更新。同時に、少数株主としての資本参加も発表されました。

女子ソフトボール:アスリート・アンリミテッド・ソフトボール・リーグ(AU Softball)

6月7日にシーズンが開幕。全米10都市を4チームが巡回し、24試合を実施します。選手の平均年俸は約4万ドルで、最大8万ドルに達する可能性もあります。開幕直前の5月30日、MLB(メジャーリーグベースボール)機構のロブ・マンフレッド・コミッショナーが、このリーグとのパートナーシップ締結を発表。過去にも女子ソフトボールのリーグは存在しましたが、MLBが公式に提携するのは今回が初めてです。
AU Softballのコミッショナーは、2023年までMLBマーリンズのGMを務めたキム・アン氏。アメリカの主要な男子プロスポーツチームで初めて女性GMとなった人物は、MLB機構でも10年間勤務した経験があります。放送面では、MLBネットワークやMLB.com、一部の試合はESPN系列でも放送されています。

初期段階で大手メディアと契約

いずれのリーグにも共通する特徴は、まだ4チームや6チームしかない初期段階にも関わらず、大手メディアと契約していることです。つまり、メディアとの協力体制をビジネスモデルの中核に据えていると考えられます。
「どうせ視聴者が少ないから、自前のYouTube配信で済ませよう」という貧しい発想ではありません。視聴者の多い大手メディアで流すことで、ファンを増やすスピードを一気に加速させる狙いがあります。たとえば、ESPNで他の人気スポーツ中継の間に、女子ラクロスや女子ソフトボールの番宣が流れれば、それだけで新たな視聴者にリーチできます。
また、視聴者数や属性といったデータを取得し、それをもとにスポンサー獲得やマーケティング戦略へとつなげていくのが、そのやり方です。
各リーグの公式サイトも洗練されており、写真や動画、記事のクオリティに「メジャー感」が漂います。これは、メディアと連携して発展していく上での重要な要素です。洗練されていないコンテンツを広めてしまうと、かえってブランド価値は下がります。
いかに早くビジネスを軌道に乗せるか、その“必勝パターン”がすでにアメリカのスポーツ界では定着しているのだと感じます。テレビ放送だけではチャンネルや時間の限りがあって難しかったものが、ネット配信の普及が進んだことも、こうした戦略を後押ししています。

米国のスポーツ史はビジネス化の歴史

かつてアメリカの大学院で「アメリカスポーツ史」という授業を受けました。野球を皮切りに、バスケットボールやアメリカンフットボールの歴史を学びましたが、その中身はほとんど「いかにして持続可能なビジネスモデルを築いてきたか」という内容でした。
成功したチームから選手を年俸倍で引き抜く。それによって年俸が高騰し、財政難でチームが消滅する。新たなリーグが立ち上がっては潰れる…。そうした試行錯誤の中で、独占禁止法の適用除外や選手保有権、ドラフト制度、ファームシステムなどが導入され、アメリカのプロスポーツは発展してきました。
たとえば、今回の女子ラグビーの新リーグも、2009年から続いたセミプロリーグの課題を乗り越えるために誕生しました。女子ラクロスのリーグも、これまでに2度失敗を経験。女子ソフトボールのリーグは、今回が4代目となります。
チャレンジを繰り返し、何度失敗してもあきらめない。 そのスピリットを、ただ「アメリカ人はやっぱり違うね」と片づけてしまって、本当にいいのでしょうか?

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この記事の執筆者

早川 忠宏

早川 忠宏 | Tadahiro HAYAKAWA

スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役

13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。

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