前回のブログに書いたスポンサーシップのテスト、予想は半分くらいあたったでしょうか。残りの半分は即興でしたが、好成績で乗り切り、教授からお褒めのメールをもらいました。それにしても、このテストは金曜日の朝に行われ、受けた学生の何人かは成績がはっきりする前に、午後に卒業式に出席するという妙に慌しいスケジュールです。
僕自身は、春学期の3科目の単位を無事取得し、これで修士課程の半分を取り終えました。
春学期のまとめを簡単に書いておきます。
(1)NCAA Compliance
NCAA(全米大学体育協会)の規定を理解するための科目でした。NCAA Manualは444ページもある分厚い冊子で、すべてを1学期で学ぶのは不可能です。そこで、最も重要なアマチュアリズムや倫理、選手勧誘、選手資格、金銭的な支援に絞って学びました。規定なので、何が違反なのかをひたすら覚えないといけないという科目でしたが、日本に比べると異常と思えるほど細かいです。
たとえば、高校生を勧誘するのに、学校の公式訪問(費用は大学が持つ)は1回だけとか、その時に許可されているのはこれとこれとこれで、禁止されているのはこれとこれだとか、勧誘の電話をかけられるのは週に1回だけとか、リクルーターは事前に登録し、しかも人数の上限があるとか、直接接触したとみなされるのはこういう場合とか、1週間の練習時間の上限など細則がびっくりするほどあります。しかも、時代の変化にあわせたり(例えば携帯メールの扱いなど)、違反スレスレの行為をした人がでてくるたびに規定は頻繁に改定されています。
学び始めて比較的早い段階で気づきました。大学スポーツが大きなビジネスになっているからこそ、ここまで細かいルールが必要なのだと。規模の大きな大学では、主に男子バスケットとフットボールの放映権料やチケット、スポンサー収入で大金を得ています。全米トップのテキサス大の体育会は1億4300万ドル(約116億円)の年間収入です(日本のスポーツ団体でこれより予算規模が大きいのはおそらく日本サッカー協会だけ)。遠征費の負担や設備の改善や有望選手への奨学金支給などでお金はいくらでも必要という現実が、ビジネス化を進める要因となっており、それでいて学業優先の姿勢やアマチュアリズムも貫かなければ存在価値が危ういという矛盾。それを感じさせられました。アメリカのスポーツ界の重要な一面を学んだクラスでした。
(2) Finance and Budgeting
僕がスポーツマネジメントを学ぶ目的のひとつはお金に関する事項の強化ですが、その方向性に合致した科目でした。ビジネスに携わる人が「お金に関することはよくわからないんですよ」とは口が裂けても言えませんからね。スタジアムを建設するのにどう資金調達するのか、スポーツ団体の財源はなど、スポーツ組織の財務を学びました。
こういうお金に関することが頭に入っていると、試合会場に行った時に目の付け所が変わってきます。看板の位置とか、座席の格付け、なぜ大型ビジョンに投資するのか、なぜTシャツを売っているのか、何を外部に委託しているのかなどなど。バランスシートの右から左へのお金の動きが見えるような感じがしてきます。競技場のど真ん中で行われている試合が人を集め、その周辺にお金になるものがあるというのはスポーツビジネスの構図そのものです。
1学期をかけたグループプロジェクトで、今の大学のスタジアムの改修案とその資金繰りを考えるという課題があり、これが非常に勉強になりました。まずは関係者にインタビューして、ニーズを探る。地元のファーストフード店や他校のスタジアムなど競合する業界の人にお金に関することを聞きにいく。財務部に当たって、大学体育会の収支状況を把握する。過去の工事に携わった人に会って、予算の算出方法と財源を聞く。こうしたすべての現状を把握した上で、現実的かつ創造的に計画を立てました。しかも、プレゼンテーションの審査員も外部の財務専門家が務め、仕事に近い気持ちでやることができました。
英語の財務専門用語(減価償却など)を覚えきれず、一度テストで失敗してしまったのですが、面倒見のよい教授のおかげで、その後は挽回して理解を深めることができました。グループプロジェクトとあわせ、苦手意識のあった分野が好きになったのは教授のおかげです。
(3) Sponsorship
マーケティングとスポンサーシップは僕の得意科目とそろそろ言い切りたいです。全部で30人ほどとは言え、クラスでトップ10に入る成績を残せました。
個々のスポーツとスポンサーをいかに結びつけるかは、それぞれが持っている特徴やメッセージをさまざまな側面(理念、歴史、市場環境、強みなど)から集めて整理することから始まります。これって、取材をして原稿を書くことに似ています。結びつきは両者の特徴やメッセージの共通点を見つけ出すということです。それぞれがなりたい方向性にプラスになるのが、よいスポンサー関係と言えるでしょう。国際的に市場を広げたい企業なら、国内重視のNFLよりも、外国人選手の比率が高いNBAと組む方がよいとか。
クラスではケーススタディーを合計4つ(ソニーのFIFAのスポンサーシップなど)こなして、実際にスポンサーの提案を行う時はどうすればよいのかを身につけました。クラスの一人ひとりが、実際のスポーツ団体または企業であると想定し、予算の範囲内で目的にあった相手を探すというようなゲームも面白かったです。
これも勉強していくと、テレビを見たり、サイトを見ていて見方が変わってきます。なぜ、このチームにこのスポンサーがついているのかということを考えるようになります。
始まる前はこんな気持ち(春学期履修科目について)でいましたが、終わってみると収穫大だったと言えます。
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Sports PR Japan 株式会社 代表取締役
13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。