AIが生み出す文章の限界
広報の仕事をしていると、他の人が書いたレポートやプレスリリースをチェックする業務が日常的に発生します。
この1年ほど、「あれ?」と思うことが増えました。
「この文章はAIがつくったのでは?」と感じることが度々ありました。
AIへの指示の巧拙がその文章に表れているようにも思いますし、不慣れな人が書いた文章より、むしろ上手いと感じることもありました。
そうした違和感を含めて感じ取れるのが人間の感性というもの。いずれにしても、材料を入力すれば、ある程度の文章に整えてくれる時代になった、ということです。
広報に本当に必要なものは「文章力」ではない
しかし、文章を書く力と、文章を書く前に話題や材料を集める力は、まったく別の能力であることには気づいていない人が多いかもしれません。
これは、私がスポーツ記者時代になってから痛感し、苦しみながらもなんとか身に着けていった能力の一つです。
人から話を引き出すためには、
○幅広い人脈があること
○相手との親しさや相性
○信頼関係
といった要素が大きく関わります。
他の記者には話さないことを、自分には話してくれた。それが記者として最も重要なことと考えられていました。
また、同じ相手でも、こちらがどんな事実関係や質問を用意しているかによって、話してくれる内容は変わるものです。
さらに、会話の最中に、相手の表情や口ぶりから気持ちを感じ取り、自分の対応を変化させることも求められます。直接言葉にされなくても、非言語で伝わってくることを感じ取るのも取材のうち。いわば、「感触をつかむ技術」も欠かせない。
つまり、文章を書くための材料をどれだけ引き出せるかは、その時、その場の人間関係にかかっているのです。
インタビューが中心でなくても同じこと。出来事を記事にする場合も、事実関係をどこまで把握できるかは、現場での観察や気づき、事前準備、それらに基づく質問の積み重ねで大きく変わってきます。
こうして改めて考えてみると、取材は人間にしかできない非常に高度な仕事だと実感します。
そして、私は広報PRの仕事に携わる中で、数多くの経営者と向き合ってきました。
「その質問で整理ができました」「いいヒントをもらえました」「自分でも考えていなかったことを言語化できました」と喜ばれる場面も多くありました。
質問を通じて相手の思考を引き出し、経営や発信の方向性を見つける。それは、AIには決して代替できない人間ならではの力だと確信しています。
寿司ロボットに見る、AIと人間の違い
一方で、AIの技術は進化し、入力した素材を料理して文章に仕立てる力は高まり続けるでしょう。
例えるなら、寿司ロボットがシャリをふんわり握るように、文章をさらりとまとめる技術は確実に洗練されていくはず。しかし、良い魚を仕入れる技術は別物であり、カウンターで客と交わす会話もまた別の技術です。そして、人間の鋭い感性や熟練の技は、ロボットにはまねのできない領域にあります。
事実、1981年に鈴茂商事が寿司ロボットを開発して以来、寿司パックや回転寿司は普及し、世界にも広がりました。しかし同時に、都心の高級寿司店は人気を保ち、住宅街の町寿司も地域に愛され続けている。仕入れが違うし、客とのやりとりも違う。それが違いを生んでいます。
経営者を支えるのは「取材力」と「聞く力」
私の質問力や聞く力で役立てるなら、志を持って事業を営む経営者を支えたい。事業を通じて社会を変えようとしている人を支えたい。
トップの考えや価値観を丁寧に言葉にし、それをブランドとして社内外に届ける。
AIが文章を生み出す時代にあっても、人間にしかできない「取材力」と「聞く力」は、経営を伸ばすために欠かせない。広報PRの真価は、AIではなく、人が持つ感性と対話力にこそ宿るのです。
トップの想いを言葉にし、ブランドに変えたい経営者の方は、ぜひご相談ください。
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