先月で学位を修了しましたが、聴講という形でクラスに出ることができます。ちょっとだけ新しいことをしてみようと思って、他の学部のクラスに出てみました。

リストを眺めて、「広報」についての基礎クラスに出ることにしました。このブログで、たびたび書いてきたように、スポーツとそれに関するコミュニケーションというのは、私が最も関心のあるテーマです。記者時代は、いろいろなスポーツ団体や企業の広報担当とお付き合いが結構濃かったと思います。しかし、自らが掲げるテーマの重要な一部分でありながら、「きちんと学んだことがないな」と、長い間気になっていました。今がよいチャンスです。

現場でコンサルティングを何年もやっていたという講師は、「いろいろな会社の仕事を手伝ったけど、一番多いミスは、顧客について徹底的に調べる前に、自分たちの思いや都合で広報戦略を決めてしまうことだ」と強調していました。

これを聞いて、ひとつの場面が思い出されました。日本で仕事をしていた時に、あるスポーツ団体が大会の観客動員を増やしたいと、策を練っていた時のことです。来場者アンケートを見て、非常に熱心に議論してました。僕も、一緒になって考えて、アイデアを言ったりしてました。しかし、それは「来場者」のアンケートでした。観客動員を増やすということは、「今は来ていない人に来てもらうようにする」ということです。来場者アンケートをいくらとっても、来場していない人のことは一つもわかりません。重大なミスです。「来場していない人」の声を聞いて、なぜ来ないのかという手がかりをつかまなければ、その人たちが来てくれるようなコミュニケーションのデザインをするのは不可能です。当時の関係者に「さしたる根拠もなく、好き勝手にああだ、こうだ言ってすみませんでした」と謝りたい気持ちになりました。

先月、日本から送ってもらって、「明日の広告」(佐藤尚之著・アスキー新書)という本を読みました。これには、ある車を例に挙げ、購入者を調べてみたら、ライバルと見ていた車とはまったく違うグループだった、それに基づいてまったく違うコミュニケーション戦略を立てたという例が挙げられています。調べること、対象の声に耳を傾けることがいかに大切か、ということ、しかし、プロでも、その大事なことを忘れてしまうことがままあるということがよくわかりました。

“Listen, Listen, and Listen. Commnucation starts from listening”

講師は繰り返しました。

一緒に聞いている周りは、基礎コースなので二十歳にもなっていない学部生ばかりでした。大学院のクラスとは雰囲気も違って、居心地は決してよくなかったのです。

でも、このことが学べただけでも、出席した価値はあったと感じています。