このブログを読んで下さる方なら、ブラッド・ピットがメジャーリーグのGMの役を演じた映画、「マネーボール」について知っている方も多いと思います。もしくは、原作の書籍を読まれた方もいるでしょう。このストーリーの軸は、選手の能力をスカウトの目ではなく、統計的なデータに注目して見極め(セイバーメトリクスと言います)、勝利への貢献度の割に、安く、見すごされている選手を集めてチームを作り、成功したということでした。イェール大で経済学を修めた、数字にめっぽう強い野球オタクが大事な脇役を務めています。

実話に基づいたストーリーで、描かれているのは2002年の話です。10年たった今、当時よりもコンピューターはハードもソフトも格段に進化しています。それに伴って、スポーツ業界においても、データや数字に強い人が重要な役割を担うようになってきているように感じます。

今売られているESPN Magazineは「The Analytics Issue」というスポーツのデータにまつわる記事が特集されています。

Brandon McCarthy という今のオークランド・アスレチックスのエースは、野球マニアの統計のウェブサイトをよく見て、自分の弱点を把握し、修正することで好成績を収めたという話(ウェブでも読めます。こちら)などが紹介されています。

これまで感覚に頼っていたことを数値化することに取り組む研究者というのもいろいろいて、記事の一覧で紹介されているものの中には、バスケットボールにおける選手の組み合わせとか、選手の成長を予測する複雑な数式とか、プレッシャーに強いかどうかとか、監督の経験値とプレーオフ進出の相関関係だとか、ユニークな研究がたくさん見られて、ワクワクします。

たとえば、テニスはまだデータ解析が進んでいるとは言えない競技かもしれませんが、The Brain Gameという会社があって、そこではショットの配球傾向に重点を置いて、プロ選手にアドバイスをしたりしているそうです。

以前、教授に聞いた話では、この不景気の中でも、アメリカのスポーツ産業は拡大を続けていると言われてます。そして、少し前なら、金融業界などに行っていたような数字やコンピューターに強い人を雇用する余裕も必要性もあるそうです。たとえば、メジャーリーグで大物選手一人と契約するのには何十億円とかかるわけですから、リスクや商品価値などを十分に計算した上で投資をするのは、ビジネスならごく当たり前のことではないでしょうか。

つまり「マネーボール」の世界は、別に珍しいものでもなくなっているということです。

また、フィールドの外にも、データや計算が役立つ場面は多々見受けられます。ファンの顧客データの管理、スタジアムにいくらの席をいくつつくるのが最も収益が高いのかという計算、チームの資産価値の計算、スポンサー効果の測定、設備投資における費用対効果などがざっと思いつくところです。

 

スポーツマネジメントに関心があるという人は、こうした 現状を避けることはできないと思わなければ、やっていけません。僕自身はデータを自ら解析する技術も持ち合わせていませんし、その周辺に強みがあるとは思っていません。しかし、他の人が説明のために並べた数字を安易に鵜呑みにしないこと、その説明のどこまでがわかって、どこからがわからないかを把握すること、自分の主張を裏付けそうなデータを探し出すことなどは最低限意識しているつもりです。

コンピューターがさらに進化し、あらゆるものがデータ化される流れはこれからも止まらないでしょう。スポーツ界も例外ではありません。生き残りには、その流れに逆らってもいいことはなく、リタラシーに磨きをかけていくことが必要です。かつてあるビジネスの先生に教わった「数字に弱い、とは口が裂けても言わないこと」をいつも心がけています。