日本では先週末にプロ野球が開幕しましたが、アメリカのMLBはきょう4日(水)から始まります。その数日前まで、国民的関心事の大学バスケットボール、NCAA選手権が行われており、このタイミングで冬から春のスポーツに切り替わる感じです。

こちらのブログもMLBキャンプに行ったあたりから野球に関連した話題が続いていますが、今回もMLB開幕記念ということで、ボビー・バレンタイン監督の話を書きます。ご存知の方ばかりかもしれませんが、2005年に千葉ロッテ・マリーンズを日本一に導いたあの人で、今季から名門、ボストン・レッドソックスを率いることになりました。
彼を見ていると、以前にクラスで勉強したリーダーシップ・ライフサイクル理論と結びつくような気がしていて、それを書きます。僕自身は、監督に個人的に接したことはなく、記事や書籍に書かれていることから考えていることをご了承ください。ボビーのファンだという方には申し訳ないですが。

 

リーダーシップ・ライフサイクル理論は、論文執筆者の名前からHersey-Blanchard theory とも呼ばれます。組織の成熟度によって、効果的なリーダーシップのスタイルが変わっていく、という論です。研究を重ねて、同じテーマで数回、論文を発表しています。日本語でのわかりやすい説明はこちらがよいかと思います。

非常に大まかに言うと、具体的な指示の多少と、人間関係を信頼して任せる部分の多少の組み合わせです。未熟な組織に対しては、事細かに指示するスタイルが合っているが、徐々に人間関係を信頼する方向に移行し、最終的には、指示は少なく、自主性に任せるという流れです。

(図解です)

これをバレンタイン監督が千葉ロッテを率いた時の例で考えてみると、

2004年に2度目の就任をした時は、若手が多く、まだ未熟なチームでした。そこで、監督が前面に立ち、細かく指示し、たとえば、打順も毎日入れ替えるなど、情熱的で主導権を強く発揮する彼の得意なリーダーシップスタイルが最も生かせる状況だったのではないかと考えられます。そして、若い選手が結果を残すことで自信をつけ、監督への信頼も増し、人間関係が深まってきた、つまり組織が第2ステージに移ったと見られる2005年に日本一というピークに達したのではないでしょうか。

しかし、翌年は4位に順位を下げます。組織の成熟度がさらに上がり、細かく指示を出すスタイルが合わなくなってきた兆しではないでしょうか。2007年に2位と立て直したのは、支援的なコミュニケーションの方法までは彼が変化できるということだと思うのですが、その先、自分を完全に引っ込めて、選手の自主性に大きく委ねるのには耐えられないのかもしれません。どうしても、自分が目立つところにいないと気が済まない人のように見えるのです。チームは低迷し、最終的には契約を更新しないことを球団から告げられます。

少し別の方向から考えると、一人の監督が長期政権を握っている場合、たとえば、マンチェスター・ユナイテッドのファーガソン監督のような人は、チームが成熟するステージにあわせて、自らのリーダーシップスタイルを全4パターン、切り替えられると見ることもできます。

また、この理論を当てはめると、バレンタイン監督が何を期待されてレッドソックスに採用されたのかも見えてきます。このチームは、2004年と2007年にワールドシリーズを制し、組織としてはピークにありました。しかし、昨季限りで、GMが去り、監督も交代となりました。つまり、チームは新しいライフサイクルに入ると決めました。再建期となると、チームはベテランを減らして若い選手を増やしていきます。その若手を、情熱的に、細かく指示を出し、ぐいぐいと引っ張っていくタイプの監督が必要となります。これまでの実績から見て、バレンタイン監督はその役割にぴったりと判断されたのではないでしょうか。

今季のレッドソックスにはまだベテランが多く残っているような気がします。数年はかかると思いますが、編成と手腕がうまくかみ合うのか。また、名門チームだけに、再建期だからといって、あまりに負けが込んでしまうと周囲の不満を止められなくなってしまうかもしれません。もちろん、バレンタイン監督も千葉ロッテでの経験を生かして、自分の苦手なリーダーシップスタイルももっとうまくできるようになっている可能性もあります。そうすれば、もう少し長くとどまることができるでしょう。

このブログで不定期に続いている「理論を実践に応用しようシリーズ」第3弾は、こんな風に見ると、面白いかも、という話でした。