アメリカの大学院を卒業していいなと思っていることのひとつは、同窓生ということで、はるか遠くにいるように感じていた人との距離がぐっと縮まったように感じられることです。

スポーツ界に限っても、それは当てはまって、NBAを見に行ってプログラムでインディアナ大出身者を見つけると、「おお、頑張れよ」みたいな気分になったりします。オリンピックや水泳に詳しい人なら、マーク・スピッツという往年の名選手をご存知かと思います。北京五輪でマイケル・フェルプスに塗り替えられるまで、1大会で7個の金メダルという記録を持っていた人ですが、この人もインディアナ大の卒業生です。大学のプールに行くと大きな写真が飾ってあって、「どこかで見たことある顔だな」と思ったのでした。

また、昨シーズンのNBAでチャンピオンになったダラス・マベリックスのオーナー、マーク・キューバンもインディアナ大学の経営学部の出身。さまざまなIT関係の会社を起業しては売却して財をなし、2000年にオーナーに就任しました。まだ50代と若く、まるでファンのように、チームカラーのTシャツやトレーナーを着てコートサイドから試合を見ている(絶叫している、との説も)ということで知られますが、この気さくな感じがインディアナの卒業生っぽいなぁと思います。

最近、そのマークが(アメリカかぶれで、すみません)興味深いことを言っている動画を見つけましたので、紹介します。Bill Simmonsというアメリカで屈指の著名なスポーツジャーナリストとの対談です。

 

2012 SSAC: Live B.S. Report: Cuban one-on-one with Simmons

アリーナにおいて、最近はwifiを入れて、観客が自分の手元のスマートフォンでリプレーや試合のデータを見たり、写真やメッセージを友達に送れるようにして楽しんでもらおうとする動きがあります。飲食物の注文をスマートフォンで行えて、配達してくれるので席を離れなくてもよい、などというサービスもあります。アリーナやチームの側も、すべてデジタル化すれば顧客の行動データを集められるというメリットがあります。

しかし、IT業界で財を成し、その強みを知り尽くしているであろうオーナーは「データ収集も必要なことだが、最優先事項ではない」と話しています。ビデオの36分すぎからです。そして、スポーツビジネスで何に最もこだわっているのか、ということを語っていきます。

「われわれが売っているのは、バスケットボールではない。エンターテインメントであり、ユニークな体験だ。場内に入ると、エネルギーを感じるだろう。それが、アリーナで試合を見るということを特別なものにしているんだ」

「だから、wifiを入れて、観客が下を向いてばっかりのような状況はつくりたくないんだ。みんながエネルギーをつくることに貢献してほしい。そのために、スタッフを使ったり、スクリーンで盛り上げたりとあらゆることをやっている。映画に行く、レストランに行くというような他のエンターテインメントとの違いはそこにあるんだ」

大まかな訳ですが、ゆっくりはっきり強調して、このように言っています。

新しいテクノロジー、手段、方法があることはわかっている。それでも、自らのビジネスのミッションに沿うかどうかで判断していることが、よく伝わってきます。軸がぶれないことが、彼のスポーツビジネスを含む、かかわったあらゆるビジネスの成功の源になっているのでしょうね。

熱っぽく語った後に、「アリーナで、(退屈しのぎの)ウェーブをやったらクビ。あれは、エネルギーを大きく下げる行為だ。60分間、キスカメラ(スクリーンに映されたカップルがキスをするというアメリカのスポーツ観戦での定番)をやるほうがまし」とオチをつけるところも、彼の人柄が表れていて、いいなと思いました。