最近の2020年東京五輪開催決定を受けて、経済効果の話がにわかに盛り上がっています。

招致委員会の試算では約3兆円、他の調査機関もいろいろな数字を出しています。

確実に言えることは、これらの事前の計算は、実際の結果ではないということです。期待に過ぎません。

僕自身は以下の3点の理由から、経済効果という数字をまったく当てにしていません。

 

(1)専門家にとっても、経済効果の計算は容易ではない

経済効果の計算は様々な方式があります。

TEIM (Travel Economic Impact Model), RIMS (Regional Input-output Modeling System), RIMS II (Regional Input-output Modeling System, version II), TDSM (Tourism Development Simulation Model), ROI (measuring financial Return On Investment)  IMPLAN (Impact Analysis for Planning)

それぞれの方式に一長一短あり、これがベストの方法というものはありません。そして、従来の方法を進化させたものが今日でも開発されています。つまり、終わりがありません。

それから、計算方式に盛り込む数字ですが、これもはっきり分かる人はいません。なぜなら、未来の数字で、計算する時点ではわかっていないからです。オリンピックを例にとっても、施設の工事費がいくらになるのか落札されるまでわかりません。チケット収入は実際に売ってみるまでわかりません。外国から何人の客が来るのか、やってみるまでわかりません。過去の大会がこのくらいだったから、こうだろうという数字を、いくつもいくつも入れて計算する以外に方法はないのです。

 

(2)計算する人は立場的に大きめの数字を出したい

ある大きなスポーツイベントを行うとして、その経済効果を一番最初に計算する必要がある人たちは、誰でしょうか。そのイベントを呼びたい人たちです。経済効果の数字を、地域の自治体や住民、企業などを説得する材料として使います。それには、大きめの数字がいい。(1)で書いた計算に入れる数字を、楽観的なものにしたい。実際、施設の建設費などで莫大な税金を使うわけですから、それでも、経済効果がありますよ、と話を持っていくことになります。

別の調査機関が計算するとしても、マスメディアで報じられることを狙うなら、盛り上がるような数字を出したいですし、何かのビジネスを促進する狙いがあるとしても、楽観的な数字を出したいです。

 

(3)負の遺産は計算に入らない

反対派の人がよく言う、巨大な施設の大会後の維持管理費は、経済効果の計算に入りません。インフラ整備による建設費は経済効果に含んだとしても、それはいつか皆様の税金で払うわけです。そんなこと、アピールしては逆効果です。開催30年後の2006年に五輪関連の借金をようやく完済したモントリオールのような例もあります。

 

留学中に論文のデータベースで調べたことがあるのですが、少なからぬ数の経済学者が大規模スポーツイベントの経済効果に疑問を呈しています。一つ例を挙げると、ステファン・シマンスキー氏(サッカー関係の書籍は日本でも売られています)が2002年に発表した論文があります。30年分の夏季五輪とサッカーワールドカップの開催国のGDP上昇を調べ、結論は「is likely to be small」と、かなり弱いトーンになっていました。

 

経済効果はあてにならない。何も考えないで受け取っちゃ駄目です。