最近、「夏フェス革命」(レジー著)という本を読みました。多くのミュージシャンが屋外ステージに次々と上がる「フェス」について、その歴史を振り返り、質が変わってきたことを音楽的な視点とビジネス的な分析の視点でとらえた興味深い本です。僕は決して音楽には明るくなく、NHK紅白歌合戦に出るような歌手のコンサートに年に3回程度行くくらいのものです。その中でここ数年は、音楽のビジネスがスポーツに似て来たな、と感じる場面が増えてきました。そうした中でこの本の存在を知り、昨年12月に発売されて早々に読みました。

 

音楽に詳しくない僕が言うのもなんですが、音楽ビジネスが楽曲の売り上げではなく、ライブイベント中心にシフトしていることは、ご存知の方も多いと思います。ライブイベントに行ってみると、「これって、スポーツのスタジアムからヒントを得たんじゃない?」と思うようなシーンがあります。例えば、曲に合わせて、タオルマフラーというかマフラー型タオルを広げたり、回したりするパフォーマンス。場内の一体感が非常に高まります。

一つスポーツ界と違うなと感じるのは、このグッズを売るために、この曲とこのパフォーマンスを決めているのではないか、というところです。ファン、特にサッカーでいえばゴール裏、野球でいえばライトスタンドにいるような熱心なファンの自発的な行動で、タオルを振っているのとは違います。もっとも、読売ジャイアンツのファンが得点した時に、「ビバ!ジャイアンツ」と歌を歌ってタオルを回すなど、ある程度の型は決まっていますが。

 

それから、グッズ販売に力を入れているのも、共通点です。一体感を味わうために身につけるTシャツ、日付や会場名が印刷されて現場にいた記念品となるようなグッズ、タオルや光るブレスレットなどの応援グッズ、日常的に触れられるバッグ類など幅が広いです。こうしたグッズの発想は、スポーツの方が先行していて、音楽ライブに取り入れられたような印象があります。

最近では、選手プロデュース弁当のように、アーティストがプロデュースしたグッズも当たり前になっています。バッジなど携帯できるものだけでなく、食べ物も結構見たことがあります。グッズのセンスが話題となって拡散したり、音楽や人柄とは別の魅力をアピールしています。逆に、スポーツの現場でも選手プロデュースのファッション系のグッズをもっと増やしてもいいのかもしれません。まだまだ、これまでの型から抜け出していないですね。選手はアーティストほど「世界観」をつくる必要はないのですが。

 

全体を見ると、音楽の側はアーティストやその周りにいる人が主導して、パフォーマンスやグッズを含めて、何を創り出し、どう喜ばせ、そこからどうお金を落としてもらうかをつくりこんでいる感じがします。一方でスポーツの側は、まだまだファンの自由に任せている部分が多く、主催する側が主導している印象は少ないです。もっとも、音楽業界はアーティスト一人(一組)ごとにマネージャーがつき、どうやって売れるかの戦略を日々考えているのに対し、スポーツ業界はそこまで人材が多くないという違いはありますが。

 

「フェス」というビジネスの型を、スポーツ業界に持ち込む手もあるのではないでしょうか。フェスは、主催者の狙いに合わせて選ばれた複数のアーティストが一堂に会し、観客の側は自分の好きなアーティストのみならず、それ以外の曲にも触れられて、新たな発見がある場です。スポーツでも、複数の競技大会を同じ場内や隣接する場所で実施して、観客が回遊して楽しめるという興行形式をやってみる価値はあるのではないでしょうか。一つのスポーツのファンが他のスポーツも知るきっかけになり、個々の競技についてはファン層拡大の可能性があります。例えば、駒沢公園のように屋外競技場一つと屋内競技場2つが近くにあり、その間に広場もあるので実現可能です。全国には、似たようなレイアウトのスポーツ公園がいくつもあります。

古い話ですが、1980年代から90年代にかけて、当時は人気ナンバーワンテレビ局だったフジテレビがゴールデンウィークに代々木競技場一帯で「国際スポーツフェア」「LIVE UFO」と称して、複数のスポーツを同時に行うイベントを実施していたことを記憶しています。番組でも公開録画や会場からの中継がなされるなど、メディアミックスで盛り上げていました。一周回って、ではないですが、ただ同時に行うのではなく、フェスのように主催する側がテーマや狙いをつくりこめば、スポーツ観戦に新しい形がつくれるかもしれません。

スポーツがフェスに学べることは、まだまだたくさんありそうです。