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施設はお金を稼ぐためにある

11.8.24

反感を買いそうなタイトルで申し訳ありませんが、敢えてそう言いたいと思います。

先日、シンシナティで開催されているテニスのツアー大会「ウエスタン・アンド・サザン・オープン」に行ってきました。ことしから男女同時開催となったこの大会は、大会の格付けも四大大会に次ぐもので、トップ選手がずらりと顔を揃えています。

シンシナティ中心部から北に車で20分ほど行った郊外に会場があります。スタンドつきのコートが4面、そのほかも小さな仮設スタンドが用意されていて、東京の有明テニスの森公園に比べると、豪華と言う感じではありませんが、コンパクトで快適に過ごせる印象を持ちました。とにかくどの試合も座って見られるというのは大事なことです(夏なので日陰を求めてですが)。一番立派なセンターコートがまさに会場の真ん中にあって、他の施設はそれを取り囲むようにできているので、一方向の出入り口に人が固まることがなく、流れがスムーズなのと、センターコートの盛り上がりが周辺に伝播していくような感じが印象的です。

コートなど真新しいのが目に付くので、会場で配られている資料を見ると、今は1000万ドル(約8億円)を投じて施設を改修している3年計画の2年目で、 4000席のスタンドを持つコートなどを増設したそうです。昨年までは2週に分けて男女を続けて開催していたのを1週でまとめてやるためには、練習コート も含めて、コートを増やす必要があったのです。

 計画の完成図です。

大会の起源は1899年と100年以上前にありますが、1979年に現在の会場に移ってから大会規模が拡大していったようです。観客動員が1979年の2万5000人から、10年後の1989年には11万6000人までぐんと伸びています。スタンドを少しずつ増設したり、コート数を増やすなど、観客を迎え入れる施設が整うと、動員も増えるという形になっていることがこれらの数字を見るとよくわかります。そして、とても特徴的だと思ったのは、何年間も調査と計算をした上で、2002年に大会の運営会社が、施設の経営権(テニスコートとゴルフ場)を取得しているのです。つまり、一年でもっとも稼げるイベントに合わせて、自分たちの思うように施設を改修できるようになり、また大会の収益を施設に投じられるようになったわけです。さらに2004年から女子のツアー開催権を外国から取得して(昨年までは男女を2週に分けて開催)、昨年は観客が約23万4000人にまで増えています。

 メインコートの様子。

 くつろいで見られる、こんな設備もスポンサーを取ってつくってます。

スポーツビジネスは、施設のビジネスであるとも言えます。スポーツの歴史のクラスで学んだことですが、プロ野球の始まりはレベルが高くなり、お金を払ってでも見たいという人が増えてきたので、柵で囲って入場料を取ったり、飲み物を売ったりする野球場をつくったこと、とあります。観客が多く集まれば、入場料以外にも売店の収入やスポンサー料が上がり、人気が増せば、テレビ中継も入って、その放映権収入も期待できます。つまり、収入増の土台は施設にあります。借り物の施設だと座席は増やせませんし、チケットの値上げぐらいで、あとは頭打ちしてしまいます。お金以外を考えても、お客さんの満足度は施設によることが多いのではないでしょうか。選手にとってよいパフォーマンスを発揮できるコートというのもあるものだし、スタンドの傾斜や座席の感触、トイレがきれいか、売店や食べる場所が充実しているか、などが挙げられます。

日本でも、スポーツビジネスが施設ビジネスであることにいち早く気付いたプロ野球の千葉ロッテや楽天などが、収益性の高いスタジアムをつくってビジネス的に成功しています。しかし、テニスだと、有明テニスの森公園は、東京都の持ち物で、HPによると、指定管理者制度で東京都港湾局の有明テニスマネジメントチームが運営しており、日本テニス協会などは大会を開催するときに、お金を払って借りています。したがって、大会に合わせてお客さんの満足度を高めるように施設を改修することはできませんし、コートの老朽化などがいくら気になっても、持ち主に要望を出すのが精一杯なわけです。仮設でスタンドをつくることはできますが、毎年仮設ですませるよりも、常設で改修して何十年か使った方が安く済むという経営判断もすることができないのです。もちろん、日本のスポーツ界でも借りている施設の条件の中で創意工夫をこらし頑張っているところ(JBLのリンク栃木など)もありますが。

日本のスポーツ施設の多くは、税金を投じ、市民の利用を前提につくっています。電光掲示板がわかりやすい例です。Jリーグを開催するようなスタジアムでも意外と簡素なところが多いです。電光掲示板は、プレーでの利用を考えるとあまり豪華にする必要がありませんが、カラースクリーンなら観戦(リプレーを見たり)や収益性(スポンサーのCMを流したりできる)という点で、観戦ビジネス的には非常に価値が高いです。収益が増えるなら、多少お金をかけてつくっても回収できます。

例えば、何かのメーカーやサービス業を経営していると、儲かった分は投資してさらに工場の設備を新しくしたり、支店をつくったりするのが普通です。設備への投資がさらに顧客満足度を高め、事業を拡大していく源になります。スポーツビジネスでも、それと同じことをやっているという話です。この会場を回っていて、そんなことが頭に浮かんできて「施設はお金を稼ぐためにある」ことを再認識させられました。

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