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競技団体こそ危機管理広報をすべき理由とは

18.3.22

ここ数年、競技団体や選手の騒動や不祥事が続いています。

「またか」と思われるぐらいで、驚きもなく、すっかり慣れてしまっているような世の中の空気さえ感じます。組織の風通しを良くするなどして危機が発生しないに越したことはありませんが、思わぬ形で見舞われることもあります。危機への備えもありますが、危機が起きてしまった場合の広報も、また準備しておく必要があります。

しかし、日本のスポーツ界を見ていると、どうもそこが弱いという印象を持たざるを得ません。「専門的なアドバイスに従っていれば、こんな失敗は絶対にありえないのに」と思う時が、頻繁にあります。他の業界より明らかに多い。本来、競技団体こそ危機管理広報をすべきなので、この機会に書いておきます。

 

(1)競技団体は公共性が高いから

プロスポーツチームも公共性は高いですが、とりわけ、競技団体(日本○○協会、連盟など)は、その競技を統括する唯一の国内団体で公共の存在です。その証拠に法人格も株式会社ではなく、公益財団法人、公益社団法人などであることが多いです。都道府県大会に出たい、全日本選手権に出たい、オリンピックに出たいとなれば、その協会に登録しなければなりません。会社なら同じ業種に複数ありますので、その仕事は好きなんだけど、A社の社風が嫌なのでB社に転職しますということが可能ですが、ある競技を上のレベルを目指してやりたいとなった場合に、そのやり方が嫌でも他の団体に移るということはできません。選手を保護するために、広く開かれた組織でなければなりません。内輪もめが露呈するのは、公共性の自覚が足らないようにも見えます。不祥事が起きていたのに、幹部が知らなかったというケースは確実に事態を悪化させます。風通しを良くするのも、危機管理広報の一環です。

また、競技団体には省庁から助成金が入っており、選手の強化費などに充てられています。税金の使い道は、特に世間から、メディアから厳しくチェックを受けます。例えば、市町村の役所や、国の官公庁の人の税金の使い方や事業の目的についての説明は、きちんと訓練されている印象を受けますが、それに比べて、競技団体の人の説明や記者会見は、平均的に見ると、全然準備されていない印象を受けます。メディアトレーニング、さらに一歩進めて、危機管理広報をきちんとやっていれば、あのようにはなっていないはずです。

 

(2)スポーツは高潔なイメージを持たれているから

皆さんおなじみの選手宣誓の場面。「正々堂々と戦うことを誓います」と、わざわざ大勢の人の前で言っています。こんな世界が他にあるでしょうか? スポーツは、これほどまでに高潔性や倫理観を大事にしています。そして、そのイメージは広く世間に浸透しています。

普段、いいイメージを持たれているからこそ、危機や不祥事が発生した時のダメージは大きいです。「スポーツの人なのに、そんなことをするなんて…」と、落差が大きくなるからです。実際、テレビのコメンテーターでスポーツ以外の専門の方がそう言っているのを見掛けますし、それは視聴者の声を代弁している、共感を呼ぶのだと思います。そのダメージをできる限りコントロールするのが、危機管理広報ということになります。

 

(3)スポーツ界はメディアの影響が非常に大きい世界だから

競技団体を経営という観点で見た場合、文句なしの中小企業です。事務所に常勤している職員が10人足らずのところもあります。規模の最も大きい方である日本サッカー協会でも予算規模は年間200億円ほど、オリンピックでメダルを獲っている日本卓球協会は約12億円、最近話題の日本カーリング協会は約1億7000万円というところです。

200億円の企業でも、まったく知られていないところは沢山ありますが、サッカー日本代表を知らない日本人はほとんどいません。ワールドカップの本大会や予選では、テレビ視聴率年間ランキングで上位に食い込んできます。プログラブや海外で活躍する選手も含めれば、サッカーは毎日、何らかの形でメディアに出ています。卓球のメディア露出はここ数年で急カーブを描き、毎週のようにマスメディアで報じられています。どんな大企業でも毎日のようにメディアに出るのは難しいです。また、毎日、テレビCMを打っているような企業の事業規模を検索してみて下さい。「兆」に達していることもあります。

つまり、スポーツ界は、組織の大きさに比べて、メディアの影響力が非常に大きいです。従って、危機が発生した場合も、メディアの注目度は高く、大量の報道がなされることもあるのは、皆さんもご存知の通りです。にも関わらず、危機管理広報が十分ではないとどうなるか。報道が出るたびに、組織や関係者のダメージがひたすら大きくなっていく、広がっていくだけです。一つ付け加えると、危機が発生した場合は、普段からお付き合いのあるメディア以外の人がたくさんやってきて、手厳しく批判してきます。それを含めて準備しておくのが危機管理広報です。

 

現場で見てきましたが、この数年で、一般企業の危機管理広報はかなり浸透し、意識が高くなっています。起こした不祥事の大きさに比べ、比較的少ないダメージで抑えられているケースも増えています。雑誌「広報会議」が年末に危機管理広報の特集を組みますが、そのランキングを見ても、失敗したと見える記者会見の数は減少傾向です。政界や芸能界でも、危機管理広報の失敗は減っている印象です。となると、下手な組織やミスをした人は、相対的に見劣りすることになります。

今回は、いわゆる競技団体に絞った話をしていますが、これらはチーム、クラブ、選手個人にも当てはまるところがあります。スポーツをスポンサーしている企業や選手を雇用している企業には、また別の危機管理広報があります。

対応の迅速さも与える印象に影響するため、危機が起きてから慌てて「危機管理広報を!」と言っても間に合いません。日頃からの備えが重要です。

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この記事の執筆者

早川 忠宏

早川 忠宏 | Tadahiro HAYAKAWA

スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役

13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。

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