今回、新型コロナウイルスのような歴史の教科書に載ると言ってもいいような事態が起こり、「この後、世界はどうなってしまうんだろう」と考えるのはごく自然なことだと思います。私自身も、自分の会社や関わるスポーツビジネス、もっと広く、スポーツ界がどうなってしまうのか、と心配はあります。今も、お客様を助けるために必死になって考え、実践しています。
そして、もう少し俯瞰して考えてみようと、ウェブの記事を読んだり、オンラインセミナーに参加するなどして、識者の未来を見る目を感じたり、登壇者の議論の中から、いろいろと考えを巡らせてきました。論理ではなく、感性でですが。私としては、「結局、コロナ前からの持論を展開しているだけじゃないか」というのでは大局観を欠いていると思いますし、かといって「全く別の世界が広がる」というのは煽りすぎだなと感じています。
まず一つ、私が思うことは、今回のコロナの問題は「これまであった流れに、刺激を与えるような存在だ」ということです。何かまったく別の新しいものが現れるとは考えていません。
その観点から「こういう流れが起こるのではないか」と、考えを整理したものを書いてみることにしました。いくつになるかもわかりません。未来が当たるか、当たらないか、ではないです。この時点での思いや考えを記録として残しておくことに、意味があると思っています。実際、私は10年前からブログをやっていますが、過去の自分の思いや考えに助けられることが、今でも多々あります。今回もその一つになるのではないかと思って書きます。
一つ目は、「スポーツ界の人間が社会に役立つことをより具体的に考え、実践する」です
コロナの問題が起こる前から、スポーツにおける社会貢献活動は、重要性が増してきていました。具体的な実践が、世界でも日本でも多彩になってきていましたし、数も増えてきています。Jリーグのシャレンなどをご存じの方もいると思います。
ただ、今回のコロナの問題で、これまでとは決定的に違う状況が一つありました。それは、「私達はスポーツを一生懸命やるだけです」という常套句を使えなくなったことです。ご承知の通り、全世界的に、練習や試合の機会を持つことがほとんどできなくなりました。人を集めて何かをすることができなくなりました。従来、危機的な状況において、スポーツによる社会貢献活動といえば、被災地に行ってスポーツ教室を行うことや、訪問活動をしたり、試合に招待したりといったことが主流でした。多くは、むしろ普及活動と言えるものだったかもしれません。
しかし今回は、試合や練習を社会貢献活動に使うことが、ほぼできなくなりました。人を集めて何かをすることができなくなりました。そして、その状況の中で、「自分たちは社会のために、何をできるのか」を真剣に考え、実践していったアスリートやチームが多数生まれました。ファンの顔を思い浮かべる。困っている人の姿を想像する。そして、自分ができることの中で何をすれば、伝えたい相手の気持ちが変わるのか。相手の状況がいい方向に変わるのか。
SNSを使ってファンを楽しませるための表現をしたり、オンラインで話すなどファンと直接交流をしたり、練習ノウハウやプログラムを一般公開したり、施設を他の人にも使ってもらったり、自らの注目度を生かして大事なメッセージを発信したり、お金や機会を提供したりと様々な実践が見られました。皆さんも「これは、面白い!」「こんなのアリ?」と、驚いた企画もあったのではないでしょうか。
創造性を発揮している人、また、それを真似して自分でもやってみる人がたくさん出てきています。試合や練習を使えない、人が集まれないという制限。私はこの言葉を思い出しました。「創造性そのものが制限を必要としている。 なぜなら、自分を制限するものと苦闘するところから創造という行為は生まれるからである」。
世界中にありとあらゆる具体例が残っています。また、トップアスリート、有名選手に限らず、例えば、スポーツクラブのインストラクターという人達でも「この状況で、自分たちは社会のために、何をできるのか」を真剣に考え、実践していることがSNSを見ると分かります。それらは遺産です。この経験をした人は、コロナの問題が終息したとしても、「スポーツを通じて社会のために何ができるのか」と考える創造性がレベルアップしたままです。また、それを見せられた側の認識もレベルアップしたと思います。もう元には戻れません。「いい企画はこれからも続けていこう」という話も当然出てきます。
9年前のブログに書いているのですが、私は、スポーツが持っているものは6つあると考えています。これを単独また組み合わせることによって、スポーツと社会貢献のアイデアが浮かぶ、助けになればと思っています。今でも毎週少なからぬ人に読んでもらっている記事です。これまでにも「他に、こういうのもあるのでは?」というコメントを頂いたりしていますが、そのへんは各自アレンジしてもらって結構です。帰納的に考えましたが、別に定義という訳ではありませんので。
スポーツ界の人間が社会に役立つことをより具体的に考え、実践する。
今回の試練を経て、いい方向にひとつ変わったのではないかと私は信じています。
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Sports PR Japan 株式会社 代表取締役
13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。