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プロ向け! 観戦力を高めてスポーツビジネスを強化する方法

24.10.3

スポーツを観戦するって、なんの気なしにやっていませんか?

お酒を飲みながら見るのが最高。好きな選手と同じ空間にいられるのがいい。そんな人が難しく考えないのは当然だと思います。原体験も、友人や家族に連れられて、というのだったりします。このようにすれば、もっと深く見られるようになるということは、一緒に見に行った人の経験値からでしか語られてないでしょう。ネットで検索したりもしない人がほとんどかと思います。

スポーツで仕事をするプロの「スポーツ観戦」とは

しかし、スポーツで仕事をしている人は、それではダメです。ここでは、プロを対象に「スポーツ観戦」を少し深堀りして、考えてみたいと思います。現場に応用してほしいと願って。いわゆるマイナースポーツや、あまり知られていない選手やチームをもっと理解してもらうためにも役に立つに違いありません。単に経験談で語るのでは別の人にお任せして、応用する時の精度を上げるべく、学術的な論文による枠組みを元に考えていきます。

「どうやったらお客さんが増えるんですかね?」「どうしたら、このスポーツをもっと知ってもらえるんですかね?」という話は、スポーツPRプランナーという職業をしている私にも相談が寄せられます。先日も、ある国際的なプロスポーツのレースをどうしたら多くの人に視聴してもらえるのか、配信映像を見てレポートを出してほしいという依頼に答えたばかりです。

それぞれのケースの”対症療法”は、私も助言して来たのですが、もっと体系的に考えれば幅広く応用できるのにと思っていました。アンテナを立てていると、あるきっかけで、観戦行動に関して分析した論文があることに気づきました。

日本女子体育大学の齊藤隆志教授によって2013年に書かれた「観戦行動の概念枠組みの検討: 観るスポーツの文化価値創造マネジメントを視野に入れて」という論文です。

観戦行動の概念枠組み

スポーツ観戦は、この論文によると、「知識の所有」→「観察・解釈」→「評価・評論」と三つプロセスに分かれていると考えます。

もう少し平易な言葉で言うと、事前にいろいろな情報をインプットしておき、それを元に試合を見ながら、起きたことの解釈をあれこれと考え、それを他人に話したり、また別の人の評論を聴くという流れです。スポーツ観戦を楽しんでいる人が、日常的にやっていることではありますが、しっかり場面ごとに分けたことに意味があります。

知識の所有

プロセスの中身を一つずつ見ていきます。知識の所有ですが、「知識」には種類があります。「スポーツの本質に関わる知識」ですと、

①種目ごとに違う体の動かし方や技術的な要素

②ルール、戦略戦術、器具、用具の改良や操作方法、トレーニングの方法

③倫理価値観に関わる芸術性、スポーツマンシップなどの感性に関わること。

「プレーヤーの競技力に関する知識」ですと、個人のキャリアやチームの歴史、戦績や記録、選手として立ち振る舞い 「スポーツ現象に関する知識」ですと、予想フォーメーションやスタメン、注目選手、監督の采配傾向、グラウンド状況などです。

こうした知識があると、勝ち負けの予想のみならず、この試合がどうなりそうか、どこを見ると面白そうかと考えられるようになります。知識の量が多いほど、細部までイメージできます。例えば、戦術や道具を変えたことがどう影響するかや元チームメートのマッチアップなどです。

知識には、もう少し広い意味でのスポーツの価値もあります。現代のスポーツ観、社会、教育、経済、歴史などの価値意識を持っていると見方が変わってきます。例えば、プロスポーツの発展の歴史、スポーツの教育的な価値、対戦する国同士の政治的な関係などです。

観察・解釈

「観察・解釈」のプロセスに移ります。
これは目の前で起こっているスポーツの現象を注意深く見て、何が起こってるのかがわかり、自分なりに分かるように考えてみることです。
それにはまず、自身の運動経験や運動知識が影響してきます。例えば、自分が結構やったことがあるスポーツなら、プロスポーツ選手のやっていくことをより理解できるはずです。また前段で書いた様々なスポーツ知識をどのくらい持っているのかも「観察・解釈」に大きく影響します。例えば、けがをして欠場している選手がいるから、このチームが苦戦しているとわかったり、この選手とこの選手は元チームメートでお互い手の内を分かっていながら対戦しているなどと知っていたりするのをイメージできますか。あと、全く知らない選手が競技をしてるのを見る経験を一度してみると、「観察・解釈」の違いがわかります。

さらに言うと、歴史や社会の中でのそのスポーツの変化や位置付けも分かっていると見方が変わります。例えば、大相撲に外国人力士が増えているというのは番付表を見れば誰でもわかりますが、なぜ日本人力士が減っているのかという背景も知っていると、より深く解釈できます。プロ野球の球場に行って、スクリーンで広告が流されるのが多いのは子供でも気づきますが、それが球団の収入になって、戦力アップにも繋がっていること見えるのは経営の理解があるからです。

評価・批評

「評価・批評」のプロセスは、スポーツに関する知識と「観察・解釈」によって得られたことを論理的に倫理的には説明できる力で。「評価・批評」として大切なことは判断できる基準を持っていることですで、佐伯・清水(2005年)の論文では、これを「スポーツ観」と名付けています。そして、他の人に分かりやすく伝えられることが望ましいです。つまり、言語化力、表現力の問題です。これを非常に上手くやっているのが、スポーツ記者という仕事です。日頃の取材で様々な知識をインプットしておき、試合中に起きた状況に合った選手のエピソードやチームの過去の歴史を紹介し、その人なりの解釈として記事を書いています。

観戦力を高めるには

この三つのプロセスを知った上で、観戦力を高めるにはどうすればいいのか。いくつかのヒントが得られました。

知識のインプットは事前に

まず、知識のインプットは事前に行ってもらわなければならないということです。言い換えると、試合中に知識を伝えることは得策ではありません。例えば、事前にホームページに選手やチームの情報を載せておく、試合前に見どころを載せたパンフレットを配る、試合前のTwitterに書き込む情報はそういう知識にすることが有効な策になります。解釈をする前の下準備を整えてもらう。より知識豊かな状態にしてから試合を見てもらうことです。

試合中に行う「観察・解釈」

試合中にやることは「観察・解釈」です。これは自分の内面で行うことなので、考えることが楽しいという人が有利です。例えば、ビジネスパーソンのように、日頃から考えることに慣れている人を伝えたい相手に絞ると、やりやすいのではないでしょうか。深く考えるのが面倒くさいという人には、「観察・解釈」は、はっきり言って向いていません。そういう方には、観戦力を高めるのとは異なるアプローチをすることです。

自分なりの解釈 「評価・評論」

自分なりの解釈を言葉にして表に出した瞬間、それは「評価・評論」のプロセスに入ります。まず、表現力、ボキャブラリーを助けることができます。ファン同士ならではのある現象の言い方、選手のニックネームなどです。昔のことをよく知っている人が、歴史を教えてあげるのもいいです。また、それが語れる場、共有できる場を用意するというのも有効な方法です。例えば、スタジアムというのは、そのリアルな場です。オンラインでは、動画配信のチャット欄やTwitterがそうした場として使われています。お互いに評論を交換することが起きると楽しいはず。一昔前の風景かもしれませんが、飲み屋でプロ野球を見ながら、おじさん同士が語り合うというのはこれです。スポーツバーでサッカー日本代表戦を見てみんなで騒ぎたい、という人は違います。

理論を実践に役立てる意味は、打ち手の精度が上がっていくことだと私は信じています。提供する側が、プロの側が、観戦力を高めてほしいと考えているのに、うまくいってない場合は、なんの気なしにやっているのではないでしょうか。

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この記事の執筆者

早川 忠宏

早川 忠宏 | Tadahiro HAYAKAWA

スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役

13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。

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