スポーツ選手のインタビューでは、よく「最高です」「応援よろしくお願いします」といった決まり文句が多用されがちです。しかし、それは本当にファンの心に響いているのでしょうか? 実は、多くの選手が「どう話せばいいのか」を学ぶ機会がないだけではないでしょうか。
スポーツ記者、スポーツPRプランナーとして、選手を陰で支える仕事をしてきた私が、スポーツ選手がより魅力的に話すための方法を、4つのステップで解説します。
スポーツ選手のインタビューでは、決まり文句が使われがちです。これらは選手が深く考えずに使ってしまっている言葉です。相手に本当に伝わるメッセージとは言えません。普段の会話では、使わないですよね。決まり文句を使うことは、言葉で伝えることから逃げ、考えることを止め、代わりにパフォーマンスで埋めているに過ぎません。
私自身、大学時代にスポーツ記者を目指していた頃、作家の佐瀬稔氏に「手垢にまみれた表現は絶対に使うな」と言われたことが30年以上経った今でも印象に残っています。考えずに使ってしまう表現は、決して心に響かないのです。例えば、「チーム一丸となって」とか「試合に集中する」といったフレーズは、どの選手も使うため、個性が伝わりません。
自分の言葉でファンに伝えるためには、言葉を仕入れるよう日常的に意識することが必要です。本を読んだり、ラジオやポッドキャストを聞いたり、よく聴く歌の歌詞を見てみたりすることは、日常生活の中でもできます。いくつになっても、新たな言葉を学び、より自分の伝えたいことに合った表現を使えるようにしましょう。
ステップ1は、「話し方」の前の話で、ここから方法論に入ります。
試合後のインタビューで頻繁に選手に求められるのは、ある場面の振り返りです。そこでは、自分がどのように考え、どのように動いたのかを順を追って説明します。
まず、試合の前に決まっていた戦術や指示、対策を思い出して話します。
次に、知覚したことを挙げます。そのプレーをする直前に何を見て、どんな声や音を聞いて、相手から何を感じたのか。
この二点が、前提となる情報です。その上で、自分がどのような判断を下したのかを説明します。
そして、その判断をして動いた結果がどうだったのかを話します。判断は良かったものの、体が思うように動かなかった、他の人のサポートがあってうまくいった、などという話です。
ステップ2は、自分の行動の説明でしたが、そこからもう一歩進めるのは、想いや気持ちを語ることです。
深い感情を共有することは自己開示であり、心理的にハードルが高い、勇気がいる部分でもあります。裏を返すと、感情を共有することで他者との距離がぐっと縮まり、相手に強い印象を与えることができます。
例えば、「ここはやるしかないと思いました」とか「あの打席の前、支えてくれた仲間の顔が浮かび、思い切り打つことができました。嬉しかったです」と話せば、「支えてくれた人の顔が浮かんだ場面は私にもある」などとファンは共感しやすくなります。
ステップ1に挙げた、言葉を仕入れておくことの重要性は、ステップ2と3で生きてきます。伝えたいことにより合った言葉を使えた方が自分もスッキリするでしょう
具体的なエピソードとは、その人ならではの経験や背景を伝え、ステップ2とステップ3で話したことを強化するものです。
敢えて大雑把に言うと「実は…」という感じで語られる話です。
エピソードが何か考えやすくするために、私の経験上よく聞いたものを分類してみると、5つになりました。
具体的なエピソードは、思い出しているうちに、自分の理解を深めることにもなります。また、他人にとっては、鮮やかにイメージできたり、順序や因果関係など物語として頭に入るので、記憶に残りやすいものです。つまり、エピソードがあると、より強く伝わります。
私がエピソードの重要性を理解したのは、まだ二十代、記者として駆け出しだった頃、高校野球の現場でした。強豪校、プロ選手を輩出するような高校の選手の中には、取材慣れしていて話が上手い人がたまにいました。何が違うのかと分析してみると、状況説明や感想で終わらず、もう一つ具体的な話を加えてくれていて、それをスポーツ新聞の記者さんたちが「エピソードがあった」と表現していたのです。
「決まり文句を止め、言葉を仕入れる」「どう考えて動いたのかを伝える」「想いや気持ちを語る」「具体的なエピソードを入れる」。この4つのステップを意識すれば、選手であるあなたの言葉はもっと伝わるようになります。
凝った表現や難しい言葉を使う必要はありません。大切なのは、自分の経験や気持ちを、自分の言葉で語ること。それができたとき、あなたの言葉はファンの心に残り、共感を生みます。
これからインタビューを受けるときは、ぜひこの4つのステップを思い出してください。アスリートであるあなたの言葉には、もっと力があるはずです。
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スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役
13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。