実は前回の小ネタは、今回の記事の前ふりでした。ちょっと長くなります。
以前にも「研究を実践に応用しよう」という記事を書きましたが、今回もその流れに沿ったものです。
僕がインディアナ大学で学んでよかったと思うことの一つは、スポーツコミュニケーションという学問分野を大いに学ぶことができたことです。この研究を始めた人の一人が、Dr.Pedersenという教授で、個人的にも大変お世話になりました。そして、この教授が編集責任者となっている、学術誌が International Journal of Sport Communicationです。今回はこの中の論文のひとつを紹介します。
スポーツコミュニケーションの研究で最近とても人気があるのが、ソーシャルメディアに関するものです。ツイッターをやっている皆さんの中にも、「どうしたらフォロワー数があんなに多くなるんだろう」という疑問を持った方がいるかもしれません。学問的な視点でも、そのように考える人は少なからずいるわけです。
Understanding Professional Athletes’ Use of Twitter: A Content Analysis of Athlete Tweets (2010)
Marion E. Hambrick, Jason M. Simmons, Greg P. Greenhalgh,and T. Christopher Greenwell(University of Louisville, USA)
というこの論文はスポーツ選手のツイッターの内容を分析して、フォロワー数の多い人と少ない人の対比などを行ったものです。分析はあるサイトの一覧表からランダムに選んだ101選手の直近の20個のツイートを抽出し、1962個のサンプルに対して行っています。
まず、先行研究に基づき、内容を6つに分類します。
かなり省略させていただきますが、サンプル全体をこの6つに分けてみると
「相互交流」と「気晴らし」で全体の6割を占めていることが大事な発見です。
さらにこれをフォロワー数の多少によって分けてみると、
アカウントを取得してからの総ツイート数の多少によって分けてみると、
つまり、フォロワー数やツイート数の多い人ほど、「相互交流」のコメントが際立って多いということが分かりました。非常にざっくりとまとめると、ツイッターでの人気選手は
「相互交流」を第一に積極的に行い、「気晴らし」つまりスポーツに関係ない話もどんどんしている
ということになります。
言われてみれば、なんとなくそんな気がするね、という感じでしょうか?
そういうことを数値データではっきりさせることが、研究の重要な役割だと思います。
また、論文ではその背景も考察されていて、コミュニケーション理論のひとつ「Uses and Gratifications Theory」というのを当てはめています。大まかに言うと、メディアを使って受けてはどのような満足感を得ているのかという話なのですが、ツイッターの場合は、特に有名選手の旧メディア(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)では見られなかったシーンこそファンが見たいもので、それを満たす役割を果たしていると考えられます。どんな音楽を聴いたとか、他の選手と遊びに行ったこととか、また、他の選手とのツイッター上での絡みも見ていて面白いですし、何より、自分の質問やコメントに直接反応してくれるのは最高じゃないでしょうか。
研究ですので、限界というのも自ら明らかにしていて、この論文だと一人につき20個のツイートしか分析していないことや、二つの分野にまたがりそうなツイートも分類上はどちらかひとつを選んでいることなどがあげられています。
参考になりましたでしょうか? ツイッターをやっていて、なんとなくでうまくやっていけている人はよいですが、このように研究成果を応用しても、ツイッター使いが上達するなら、それもよいと思います。
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Sports PR Japan 株式会社 代表取締役
13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。