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アスリートファーストは使わない

18.10.13

スポーツ界でよく耳にする言葉だけれども、私自身は使わないものの一つが「アスリートファースト」です。

 

たびたび聞く文脈としては、競技時間がテレビ局の要望に合わせられて、選手が調整しにくいのはどうか?、この施設は本当に選手が使いやすいように考えて作っているのか?、選手より役員が優先なのはどうか?何か意思決定をすることにおいて選手に意見を聞いたのか?などの話があります。「選手を第一に優先すべきだ」「選手がいなければスポーツは始まらないだろう」などの自身の思いを、キャッチ―に表現するために使っている方がいるように思います。

ただ、この言葉について少し調べただけですぐわかるのですが、定義や意味が定まっていません。今のところ、辞書には載っていません。グーグル検索で上がってくるのは会社名だったり、学術的に使われている言葉なのかをチェックしようと、Google Scholarで英語で調べても、書籍の題名としては挙がってくるものの、論文で使われるようなものではないようです。ビジネス界で使われる「カスタマーファースト」とは全然違います。言葉をそれぞれが勝手にこうだろうと思い込んで使っていては、コミュニケーションは成り立ちませんね。

 

もう一歩進めて、考えてみましょう。スポーツ界において、兎にも角にも、選手を第一に優先して何でも決めるべきなのか、と言われると、私はそうは思いません。選手を優先すればベストな意思決定になるのかというと、私の見てきた、やってきた経験では、そうはなっていないと思います。それぞれの役割が交わり合うところで、都度都度、妥協点を見つけていく方がいい、というかそれが現実ではないでしょうか。つまり、選手も含めてすべての役割の人が平等だと見ることがその土台になります。

「選手がいなければスポーツは始まらないだろう」と強く主張する方には、逆に、選手だけでできるのか、というのを想像してもらいたいです。大きなスポーツイベントの会場にいる人を全部引きはがしていくシーンを思い浮かべてみましょう。観客はいなくなり、その案内係やチケット販売員もいなくなり、報道陣がいなくなれば、それを仕切る人もいらなくなり、演出もやめ、大きな会場を借りたり、立派な看板をつくらないならお金もかからないのでスポンサーもいりません。大会の順位決定を司る役員、試合の勝ち負けを決める審判もいらない。残るのは、まるで公園で2人でバドミントンのシャトルを打ち合う姉妹のような感じになります。

スポーツの歴史を学ぶとすぐにわかることですが、実際に起きたのは役割が増えていくことでした。最初は選手だけでやっていたところから、審判を置き、団体ができて、入場料を取って…という風に発展していきました。必要だからこそ役割が増えていったのです。必要な役割を果たす人たちに対しては、互いに敬意を持って接すること、相手のやらなければいけないことも考えることが大事です。敬意、尊重はスポーツマンシップにつながってくる話です。

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この記事の執筆者

早川 忠宏

早川 忠宏 | Tadahiro HAYAKAWA

スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役

13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。

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