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スポーツ界に「共感企業」はあるか?

11.2.22

年末に日本から送ってもらった本の中で、自分の感覚の中に染み込ませるために繰り返して読んでいる本があります。

「共感企業 ビジネス2.0のビジョン」 阪本啓一 日本経済新聞出版社

という本です。

著者はコンサルタントで、僕は日本にいた時に1度、講演を聞きに行ったことがあります。著作、翻訳も多数ありますが「ゆるみ力」「ブランドの授業」「ビジネスを育てる」などを読みました。世の中の見方、考え方にすごく共感できるビジネスパーソンの一人です。

どのあたりが、ということですが

○アメリカの最新研究を翻訳したり、トレンドを捉えていると同時に、「まいど」の精神や渋沢栄一を師と仰ぐなど、日本の商いが大切にしてきたことも尊重する和洋折衷のよさ

○人間も自然の一部であり、大きな循環の中にいるということを大切にしている

○鋭い論理と温かい感性のバランスのよさ

という感じでしょうか。

 

スポーツビジネスの世界で頑張ることを決めている僕ですが、それもビジネスですので、大切にしたい考え方をこの本や阪本氏のこれまでの言葉からたくさん学んでいます。

この本では、「売るのではなく、選ばれること」というのが、まず非常に参考になりました。ソーシャルメディアでつながりっぱなしになったこと、検索が常識になったことなどからブランドの旗をしっかり立て、売り込むのではなく、「ウッフィー」を増やすことが大切というお話。このブログでも一度「ソーシャル>メディア だからね」 という記事を書いていますが、もっと大きくとらえた阪本氏の話は非常に納得で、このブログを書くときにも常に意識しています。

それから、「doingではなくbeingから発想すること」。もし、僕自身が自分を「スポーツの現場に行って、文章を書く人」と考えていたら、大学院で学んで転職を目指すことなど実践できなかったでしょう。うまく言い表せていないかもしれませんが、「スポーツの世界を中心に、人のつながりを築き、世の中のハッピーに貢献する人」というように、氏の言う「あり方」を考えたからこそ、次の展開を考えられるようになったと思います。

「高い志をもつこと」。これも会社を辞めてから、ものすごく意識するようになりました。この年で大学院で学ぶという選択は珍しいことなので、何度も何度も「どうしてそのような選択をし、将来どうしたいのか?」ということを聞かれました。日本を出た時はまだぼんやりしていたのですが、何度も人に説明するうちに、ちょうど前の段落に書いたように表現がこなれてきたのと同時に、自分に言い聞かせるような感じになってきました。そして、志を公言することで、サポートする人が現われてきます。

 

個人的に「あり方」を見つめ直すのと同時に、スポーツの団体はどのくらい、これらのことを意識しているのかというのが、気になります。

もし、スポーツ団体が、「競技力の向上や世界でメダルを取ること」を自らのdoingだと定義していたら、「もっとスポンサーが欲しい」とか「もっと国からの補助が」とか言ったところで、共感は得られないと思います。一部の人がスポーツをうまくなったところで、他の圧倒的大多数の人にはほとんど還元がないからです。

選手やチームがブログやツイッターをやるようになって、新聞やテレビ、試合観戦だけが主な接点だった状況が完全に変わりました。見たい人が、もっとよく見られるようになったわけです。商品や会社選びなどと同様に、スポーツ団体も以前より多くの目に日常的にさらされていると考えられます。本当にすぱっと選ばれる存在になるための何かを行っているでしょうか。

「共感企業」を読み返すたびに、ひとつまたひとつと、新たな発想や問題意識が生まれます。もうしばらく読み続けることになりそうです。

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この記事の執筆者

早川 忠宏

早川 忠宏 | Tadahiro HAYAKAWA

スポーツPRプランナー ®
Sports PR Japan 株式会社 代表取締役

13年間の記者経験と米国留学を経て広報に転身。日本ブラインドサッカー協会で初代広報担当として認知度向上に貢献し、PR会社でのコンサルタント経験も豊富。スポーツビジネスに特化した広報支援を展開し、メディアとクライアントへの深い理解を基に、ブランディング強化や認知度向上をサポート。スポーツ関連団体や企業に対する柔軟な対応で、成長を目指すスポーツ関係者から高く評価されている。

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