今回の内容は少々専門的になりますが、自分としては「見えた!」という感覚なので、書かせていただきます。

アメリカでは先週末は、MLBのファン感謝デーが各地で行われていました。新戦力との契約やキャンプインの日程、また来週末は国民的イベントのスーパーボウルがあることを考えると、この日しかないという感じなのだと思います。直接肌で感じないと気がすまないタイプなので、僕は29日に青木宣親選手が入団したミルウォーキー・ブリュワーズのファン感謝デーに行ってきました。バスを乗り継いで8時間くらいかかり、1泊2日の旅でしたが、見られる時間があるのなら、と考えて投資しました。

場所は街の中心部のコンベンションセンターです。昨年7月に卓球を見に行ったのと同じところですが、集まっている人の数が全然違っていました。開門時間ちょうどの午前10時に行きましたが、長い行列が建物内をぐるぐる回って、入場するまで20分以上かかりました。(翌日の地元紙によると 12,118人の過去最多入場者だったそうです)

日本ではプロチームのファン感謝デーというのに行ったことがないので比べられません。しかし、ブリュワーズのファンとのコミュニケーション戦略の緻密さに深い感動を覚えました。まず、雰囲気のわかるチームサイトの写真はこちらを見てください。

広い会場の中で、大きくスペースを占めていたものが3つありました。(1)キッズゾーン(2)サインをもらえるゾーン(3)インタラクティブ(相互交流)ステージ です。これはつまり、ファンと言ってもひとくくりにしないで、メインターゲットを3つに分けて、絞り込んでいると考えられます。

(1)小学生くらいの子供たち(とその親)は、体験で遊んでもらうことをメインに据えています。エアで膨らませた遊具や人工芝のフィールドでの野球教室、ベース間走のタイムを計ったり、父親が子供にトスバッティングを教えられる場所もありました。さながら、野球の子供向けテーマパークといった様子です。それから、子供たちだけを集めたQ&Aセッションも面白かったです。「ホームランを打たれるとどんな気持ちですか?」とか聞いてました。

(2)サインをもらえるゾーンは6箇所もあって、定められた時間に、選手が250人までサインします。チャリティーに募金(選手の人気度などに応じて金額も$25から無料まである)することが求められています。列はかなり長く、待たされるので、小さい子供は我慢するのが大変そうです。むしろ、列の中で目立つのは、ボールやカードを持った「お宝コレクター」という雰囲気の大人たちでした。相当数いることの現われとして、こうした人たちが客である「コレクターグッズショップ」が10軒以上ブースを設けており、にぎわっていました。また、古い球場の備品や昔のパンフレットなど、ミニ博物館な展示もありました。

(3)チームの動向が気になるという熱心な人たちとのコミュニケーションも重要です。ステージでは、チーム幹部がファンの質問に答えるショーが1日に何度も行われました。コーチや監督、そして最も大事な話し手はGMです。新シーズンの布陣が固まったので、それに関する質問を主に受けます。ファンからの質問があまりにレベルが高くて、ほとんど記者会見みたいでした。「○○選手との契約はなぜ複数年でなかったのか」とか「リリーフ陣で○○選手が抜けて、○○選手が加わったが、役割分担はどう代わるのか」とか「マイナーの有望株の○○選手が守るポジションはどうするのか」とか。GMの答える姿勢も笑ってごまかすようなことはなく、実に真摯に丁寧に説明していました。

上記のそれぞれのターゲットは、求めているの第一優先がまったく違っていることがわかると思います。例えば、(3)のステージの周りには子供はほとんどいません。きちんとそれぞれのターゲットのニーズを満たすことを考えています。広い会場で、さまざまなイベントが同時に行われ、好きなところに行けばいいわけです。

ほかにも、勉強になった点がたくさんありました(ノートにメモしまくりました)が、少しだけ挙げると

記念写真を撮れる場がたくさん用意してあること。チームのマスコット、チーム全員の集合写真の等身大パネル、ロッカールームの一角を再現した場所、往年の名選手などセッションなど。こうした写真を見るたびに、チームのことを思い出すはずです。もちろん、後日球場に来てもらえることも期待できます。

また、チームの選手やコーチ、関係者は全員が統一してジーンズやチノパン姿でユニフォームの上だけを着ていました。グラウンド上の姿とは違い、カジュアルな姿勢でコミュニケーションしたいとのメッセージを発しているように見えました。

一つ一つのステージ上のショーは1時間以内に収められていることで飽きさせないし、いろいろなところを見て回れる。(時間割や詳しい内容はこちら

こうした細かいところにまで配慮が行き届いているので、時間がたつのがあっという間で、おなかがすいたなと思ったら、3時間たっていました。

ひとつのチームのファンと言っても、細かく見ていけば、ニーズは違っていること。それにしっかり応えること。このブログのテーマとして掲げている「スポーツに関わるコミュニケーションをやさしくすること」を、目の当たりにした思いがしました。