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シニア層の存在感

12.3.21

あれだけ(少なくとも100人だとか)アリゾナのキャンプ地にたくさんの日本メディアが来ているけど、取り上げられていないであろう話をもうひとつ書きます。キャンプを見て回って、もう一つ印象に残ったのは、球場で温かく迎えてくれるスタッフの皆さんです。

駐車場の案内、チケット売り場、ゲートでの荷物とチケットのチェック、プログラムの販売員、座席への案内係と、席に着くまでにこれだけの人に触れ合います。「ウェルカム」と言われたり、「この球場には慣れていますか」と話し掛けられたりします。

そして、すぐに気がつきましたが、これらのスタッフの平均年齢が高い。ほとんどがシニア層です。

(入場時の持ち物検査です)

フェニックスやその近郊の都市は冬でも暖かく、ハリケーンなどもない過ごし易い気候なので、リタイアした後に移り住む人が非常に多いそうです。僕の感覚では、物価も安いように思います。他にもIT産業などで伸びており、統計によると、アメリカでも屈指の人口急増圏だそうです。車で球場を回ると、ダウンタウンから離れるにしたがって、道路や店、家が新しいことに気付きます。

野球を見ていると、観客の中にもシニア層が目立ちます。後ろの席のおばさまたちが、野球そっちのけで世間話に花を咲かせていたこともありました。彼女たちにとって、球場は、近所の公園みたいなものです。こうした観客と気さくに言葉を交わしながら仕事をしているスタッフたちもまた、シニア層であるわけです。

(寄付の受付をする女性たち)

レンジャーズの試合中、日陰を求めて通路に立って見ていた時に、一人のおじいさんスタッフと話をすることができました。(写真に写っている人ではありません。念のため)

「どこから来たの?」と聞かれて、「インディアナから。ここは暑すぎですよ」と答えたら、このおじいさん、ロブさんはインディアナの隣のイリノイ州(シカゴのある)から定年後に移り住んだとのことで、話が弾みました。高校の先生を長く務めていたそうで、コミュニケーションを取るのが上手でした。会話を一部要約して再現します。

 

1日、何人ぐらいのスタッフが働いているんですか?

「120~130人ぐらい。コンセッション(飲食物の売店)などを除いて、後はみんなボランティアだよ。仕事は、安全管理、IDやチケットのチェック、案内係、体の不自由な人のケア(車椅子やカートで、席からマイカーまで運んでくれたりする)とか、みんな得意な仕事をやっているんだ」

チームワークが良さそうに見えるんですけど、長く働いているんですか?

「この球場のボランティアは普段はある基金のために、いろいろな活動をしている。寄付集めのための活動や、テニス大会とかほかのイベントの補助などもやっているんだ。だから、お互いのことがわかっている人が多い。近所の人もいるし。(MLBの)キャンプが行われる、この1ヶ月が一番にぎやかだね」

何人ぐらいのグループなんですか?

「700人くらい。だから、全部の試合で働く必要はないんだ。自分の出番は(全試合の)半分くらいかな。休みも十分取れるし、楽しくやれる範囲でやっているよ」

今までで働いてきた中で印象に残っている場面は?

「シカゴ・ホワイトソックスのファンだから、チームがこの球場に来てくれる時は楽しみだ。昔の有名な選手が球団に(コーチやフロントで)残っていたり、試合を見に来たりして、近くでちょっと言葉を交わしたりもできるしね。そういえば、タダヒト(井口忠仁選手=2005年のワールドシリーズ優勝に貢献)はいい選手だったね」

この仕事の楽しみを挙げるとすると?

「まずは野球が見られること。これはハッピーだ。あとは、チームの人や、いろいろな町から見に来てくれるファンといろいろな会話ができることだね」

 

このロブさん、確かに積極的に周囲の人と言葉を交わしていました。「写真、撮ろうか?」 とか、子供に話し掛けたりとか、同僚とも雑談混じりによく話をして、楽しそうでした。また、球場経営の観点からすると、このクオリティーの人材を大量にコストがほとんどかからずに提供できているというのは、非常に大きいです。

このブログでは、以前にも2度ほど、スポーツの現場で見たシニア層について書いています。仕事や子育て、人付き合いなどで豊富な経験を積んでいるシニア層は、球場のサービスを質を間違いなく高めています。何というか、のんびりとした、落ち着いた、温かみのある雰囲気をつくっていると感じました。また、働く場を持つことで、シニア層の人たちもやりがい、生きがいを持って、キャンプの行われる約1ヶ月間、充実した時間を過ごしています。

この話、スポーツにとどまらず、地域、コミュニティー、高齢化社会への対応など、広がっていく話だと思うのですが、どうでしょうか?

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