仕事柄、広報やPRが上手な会社というは、気になるものです。最近は広告費をどれだけかけるか、ではなく、広報力の巧拙がヒットするかどうかを左右するそうです。日経ヒット商品番付を見るとそれが如実に現れているとか。

 

広報力が気になる会社の一つに、地鶏などを提供する居酒屋「塚田農場」などを経営するAPカンパニーがあります。社長の存在感や芯の通ったメッセージ、農家の方の表情、店舗でのお客さんの喜ばせ方、総合力が高く、すごく伝わっているなと感じます。やっていることそのものがユニークという強みもあります。

その社長が「6次産業」というキーワードを必ず使っています。1次(農業)+2次(加工業)+3次(サービス業)で、6次です。原材料の供給から、生産加工、そして販売までを自社で手がけている。卸売りのような中間業者を省くことで値段も下がり、利益が還元されやすい。供給をコントロールしやすい、販売の現場で得た情報を反映して対応しやすいなどのメリットがあります。川上から川下までを押さえるのは、ビジネス界の流れとして定着した感があります。他にもユニクロもそうですし、商社も垂直統合のビジネスを手がけています。

 

スポーツをそんなのと一緒にするなと言われるかもしれませんが、スポーツ界でも才能を発掘し、育て、プロとしてお客さんの前に出すという一連の流れがあります。それが一貫して行われる仕組みが発展していくのではないか、というのが僕の見方です。

代表的なのは、サッカー界です。クラブチームは、子どもや中高生の年代のチームを持ち、才能を発掘して、ふるいにかけながら、育てていきます。最終的にはトップチームに上がります。トップチームの試合運営というのは、サービス業そのものです。

また、スポーツ界には、マネジメント会社というのがありますが、関わっている人たちに聞くと、そんなに儲かる商売ではないそうです。一つ仕事を取ってきてもマージンによる収入は限られ、チームの取り分というのが結構あったりします。有名選手ほど、試合のスケジュールが過密になり、なかなか儲かりそうな仕事を入れる日取りがないとか。かと言って商売に時間を割いて、プレーのパフォーマンスが落ちては商品価値はがた落ちになってしまい、本末転倒です。

そうすると、儲けたいマネジメント会社はどうするか? 自分たちで発掘して育てることと、選手を見せて稼ぐ場である大会の両方に手を広げていきます。垂直統合です。これをやっているのが、世界最大のスポーツマネジメント会社IMGです。日本人では、テニスで今話題の錦織圭選手らが所属しています。

IMGはテニスやゴルフの選手を育てるアカデミーを自前で持ち、世界中から集めた選手をふるいにかけて、才能ある一部の選手を育てています。これは、というトップ選手はもちろん、IMGの所属選手になって、大会の賞金やスポンサー契約でがんがん稼ぎます。と同時に、IMGは経営に深く関わっているテニスなどの大会をいくつか持っています。自分たちの所属選手を出すことで、大会の価値を高め、入場料や放送権料、大会スポンサー料などの収入を上げます。他が主催する大会の場合は持っていかれていた分が、自前の大会ならすべて自分たちの手元に残るわけです。IMGと契約している有名選手の出る出ないが大会の価値を大きく左右するわけですから、それで儲かった分を自分たちのものにするのはビジネスとしてまっとうな感覚です。

日本だと、大相撲は発掘、育成、興行まですべて自前で行う垂直統合型(今は強豪大学から入る人も多くいますが)。 野球は完全分業制と言えるでしょう。五輪を目指す所謂アマチュア競技では、ほとんどの場合、発掘と育成の仕組みはできていますが、その投資を回収するはずの場である日本代表チームの価値を高めるとか、大会の経営という点には力を入れていないため、全然儲かっていません。

スポーツ業界はだいたいの場合、他の業界に遅れを取っています。他の業界で当たり前になっていることを自分たちでもやってみる思い切りのよさ、変革の意欲があるのかが問われますね。