広い世界の中で、隣の国でオリンピックをやっているのに、現地に行かないわけにはいきません。このほど、平昌オリンピックの現場を視察してきました。10年以上前ですが、夏の五輪も冬の五輪も現地に行ったことがあります。スポーツの現場というのは年々進化しているものです。予算規模も莫大ですし、世界中の注目を集める場は、最新のスポーツマネジメントのショーケースとも言えます。久々の五輪の現場で見たことはたくさんありますが、その中から特に重要だと思うポイントに絞って連載します。

1回目は試合会場についてです。

オリンピックの会場というのは、きれいです。競技ごとにカラーが決まっていて、外側も、ロビーも、スタンドも統一感あるデコレーションになっているんです。また、他の競技大会のようにスポンサーの看板はありません。目立つのは五つの輪だけ。これが写真や放送でもオリンピックが特別なものに見える理由の一つです。だから、会場に入った時の雰囲気は、「ああ、やっぱりオリンピックは違う」と、昔を思い出したような感じがしました。

階段を上がり下がりしたり、ロビーを回ってみるなどしても、見た感じでは、あまり昔と変わったところはありません。

 

 

変わったのは、会場を盛り上げる演出をするようになったことです。

競技開始が近づくと、スクリーンに女性のアナウンサーが表れ、観客に呼びかけます。韓国語と英語で話します。「Are you ready, fans?」などと叫ぶと、国旗などの応援グッズを持ったファンが応えて、盛り上がります。「あれ?」と思いました。僕が覚えている限り、昔のオリンピックでは、こういうシーンはありませんでした。このアナウンサーは、その後、スタンドに行って、観客と掛け合いをします。「誰の応援に来ましたか?」「〇〇選手への応援メッセージをどうぞ!」などやっていました。

スピードスケートでは、競技開始前や整氷の時間に、韓国の歌手やオランダの楽団がパフォーマンスを見せていました。このオランダの楽団は、スピードスケート界の名物なのですが、かつてはスタンドにいて、自主的に演奏していました。しかし、今回見ると、リンク中央のステージに上がり、主催者側の出し物の一つとなっていました。

他にも、スクリーンにスピードスケートに関するクイズを出したり、また、カーリング会場では、なんと「KISS CAM」(映された人はキスをする。カップルじゃなくて、子どもへのキスもある)まで、ありました(アメリカ人の観客はこれに慣れているので、パッと反応します)。アメリカのスポーツシーンでよく見かけるような観客向けの演出が、オリンピックの会場でも行われるようになっていたのです。ただ、カメラの台数が少なかったり、観客が反応しきれなかったりと、こなれていない印象はありました。

 

 

加えて、目立ったのはプロジェクションマッピングです。照明を落とし、競技のイントロとして、場内の緊張感を高める演出です。韓国の名所の映像やその競技の過去の五輪のシーンなどが使われていました。終わると、歓声がわっと沸き上がります。最近の会場はLED照明なので、点灯してすぐに明るくなり、進行を妨げません。

 

試合会場でのこうしたシーンは、テレビ中継では映ることがあまりないと思います。オリンピックは言うまでもなく、4年に一度金メダルを争う特別な場です。競技の本質的なところを見せれば、観客にはそれで十分とも考えられます。だから、観客の気持ちを高めたり、飽きさせないようにする取り組みをオリンピックの場でもするようになったんだな、というのは僕にとっては驚きでした。