前回の続きです。

3月4日に行われたスポーツマネジメント学会のシンポジウム「スポーツマネジメント教育:学会からのカリキュラム提案」の中で、取り上げられた話題について、一つ紹介したいことがあるので書いておきます。

このシンポジウムでは、プロ野球とJリーグのクラブに対しての調査から、スポーツマネジメントの現場からの声として、一番求められるのはコミュニケーション力であるということが明らかになりました。プロスポーツチームは、一つの組織の中に、まったく違う仕事をしている人が集まっているという特徴があることが話され、例えば、チケット販売とスポンサー対応と物販と運営とはそれぞれ全く仕事内容が違い、しかもその間でコミュニケーションを取らなくてはならない、その能力を持っている人が必要だという話になりました。そして現実的には、社会人として経験を積む中で身につけてきた人を採用しているという話がありました。

この学会は、大学でスポーツマネジメントを教える人たちが集まっている場です。大学で教えていないんですか?という問いが発せられるのですが、その流れで出てきたのが、前回の記事に書いた「スポーツコミュニケーション」という科目でした。しかし、これは、現場で求められているコミュニケーション力について学ぶのとは違います。じゃあ、大学で身につける機会はないのかと言うと、1か月など比較的長期のインターンではコミュニケーション力を上げられる学生もいる、と一人の登壇者が話しました。インターンは単位になるので大学教育の一つかもしれませんが、実際に現場で必要なコミュニケーション教えるのは教員ではなく派遣先の組織の人なので、ちょっと違う気がしました。

 

コミュニケーション力って、大学で教えられるものの一つだと僕は思っています。その時に頭に浮かんだのが、私が大学で取った「交渉学」というクラスです。大学時代に身につけたことはいろいろありますが、その後の人生で、英語以外で最も多くの場面で役に立っているのが、これだと断言できます。

クラスでは「Getting to Yes」という本を読み込みました。交渉学の生みの親と言われるハーバード大のロジャー・フィッシャー教授らが書いた本で、日本ではハーバード流交渉術というタイトルで文庫本にもなっています。どんな内容なのかは、「交渉学」「ハーバード 交渉術」などをキーワードに検索をかけてもらえば大まかにはわかりますし、本の内容をまとめたサイトもありますし、実際に本を読んでもらうのがよいと思います。公立の図書館にも置かれている本です。

クラスではこの本の考え方を自習した後に、グループをつくって他のグループと仮想の交渉を行って、その考えを身につけるというプロセスを取りました。グループ内でいろいろ話しますし、人の性格も見えますし、クラス外でもいろいろ話して準備した楽しい思い出が残っています。詳細は忘れてしまっているところも多いのですが、これを学んだ後に、交渉とはテーブルをはさんで向き合い、希望と条件をどんと突きつけて、駆け引きを行うものではなく、相手と横並びの席に座っているかのようなイメージで、双方にメリットあるものをともにつくっていくことなんだ、と考えを改めました。それが社会人となり、立場の違う相手と話す時に今でも非常に役に立っています。

 

先月、アメリカに行った際に、大型書店「バーンズ&ノーブル」を覗いたところ、ビジネス書のコーナーに「Getting to Yes」の改訂版が平積みされていました。「うわ、懐かしい」と思ったのと同時に、何十年経っても人の役に立つものを残すって素晴らしいな、と感じたところだったのです。スポーツ業界で働く人、働きたい学生にも役に立つ一冊だと思います。