新型コロナウイルスの影響が広まり、この一週間で世界のスポーツ界でも、当たり前の光景が一気に失われました。週末なのに、世界中で行われているプロスポーツイベントがほとんどない、という極めて異例の状況です。
アメリカのNBAやNHLが中断。MLBもキャンプを打ち切り、開幕も延期。国民的行事と言っていい、NCAAバスケットボールトーナメントも中止。プロゴルフツアーの試合もなければ、プロテニスツアーも全てキャンセルです。ヨーロッパのサッカーでもプレミアリーグ、ブンデスリーガ、スペインリーグ、セリエA、フランスリーグと主要5大リーグが中断となりました。
日本では選抜高校野球大会の中止が決まり、プロ野球の開幕も延期。Jリーグも中断しています。大相撲春場所、プロ野球のオープン戦、Bリーグが無観客で行われている状況です。

いまだかつて、こんなシーンは見たことがありません。
しかし、こういう時だからこそ、現状に慌てるのではなく、状況が好転した時の事を想定した準備として、自分の気持ちや考えを記録しておくのが大事だと思います。

試合がなくなったり、無観客試合が続く中で、私が改めて感じていることがあります。それは「何がスタジアム(アリーナ)を特別なものにするのか」ということです。
昨年、「何がスタジアムを特別なものにするのか」をじっくりと考える機会がありました。ラグビーワールドカップの試合を、慣れ親しんだ味の素スタジアムで観戦した時でした。

味の素スタジアムには、数えきれないほど行っています。FC東京の試合観戦が一番多く、そのほかにはコンサートを見たこともありましたし、体験型イベントで主催者側の立場で入ったことも何度もあります。しかし、昨秋にラグビーワールドカップの試合観戦で行った時には、見慣れたはずのこのスタジアムが全く違うものに感じるという強い印象が残りました。
それは海外からのファンが非常に多く、日本のファンとは違う行動をし、全く別の雰囲気を作っていたからです。いつもの通路やスタジアム周りの様子が、ビールを飲んで、歌って騒いでいる彼らによって違うものに見えました。試合が始まる前に、ファンが歌う応援歌がぐっと盛り上げました。ラグビーを見る目が肥えており、何がいいプレーなのかがよく分かっていると感じさせる、反応やどよめきがありました。
建物としては同じです。スタジアム内の装飾や演出が違っているというのも、事実としてはありました。しかし、スタジアムを特別なものと感じさせるのに、それを遥かに上回るインパクトがあったのは、海外からのファンとそれに引っ張られた日本のファンが作り出す雰囲気でした。

私は、プレーがファンを盛り上げるのだろうと考えていた時期もあったのですが、これらの経験から、今は逆だと考えています。ファンがプレーの質を高める。ファンがスーパープレーを引き出す。
プレミアリーグのクラブのスタジアムツアーに参加した時に聞いた話があります。リバプールのアンフィールドやトットナムホットスパーズの新スタジアムは、ゴール裏にいる熱烈なファンの声を最大限に選手の力とするために、声が一つの塊となるように、意図的にその部分を一層式のスタンドで造ったそうです。建築物としてのスタジアムにも、ファンがプレーに影響を及ぼすという点が重視されているのだと知りました。

どんなに選手がスーパープレーをしたとしても、無観客試合の時に特別な気持ちになるでしょうか。今、無観客試合を経験している選手が、違和感や寂しさを口にしています。世界中のスポーツを愛する人が、当たり前にあった週末の楽しみがなくなってしまった喪失感を感じています。
何がスタジアムを特別なものにするのか。その答えはファン。選手とファンのつながりなんだ。
今、そのことを改めて噛み締めている人が、世界中にたくさんいる。そんな週末なのではないでしょうか。